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その後ー5

「そうそう、これ」 松浦はテーブルの横に置いていた雑誌を双海に手渡す。 それは賃貸物件を紹介する雑誌だった。 「俺、この部屋に特に思い入れもないしさ。中々逢えない ならいっそ引っ越して同棲した方が いいと思ってさ。どう思う?」 「同棲…?」 雑誌はかなり何度も見たのだろうか、シワシワになっていて所々に付箋(ふせん)が貼り付けてある。 何度も何度もこれを見ながら部屋を選んでいたのだろう。 きっと、松浦も寂しかったのだ。だから一緒に過ごせる方法を考えたのだ。 (なんだ、僕だけじゃなかったんだ) 「…崇だって寂しかったんじゃん」 不意に名前を呼ばれて、松浦が笑顔になる。 「あったりまえだろ」 唇を重ねて、双海の身体を横たわらせた。 「う、ん…ッ」 舌を絡めながらお互いに求めあう。 タチ同士の二人。初めこそジャンケンで負けた双海がネコになっていたが回を重ねるたびにそのままになっていた。 「好きだよ」 松浦の囁きにゾクッとしながら双海はその身体に抱きついた。 笑っておどけて見せる松浦も、汗を落としながら動く松浦も、優しくキスをする松浦も (全部、僕だけのものだ) 「たか…しっ…、僕も好きだ、よ」 「ッ…!!」 双海のその言葉に、松浦は微笑んで大きく体を反らした。 それから。 ふと目覚めると横で松浦が眠っていた。 少し汗でしっとりした黒髪に触れながら、双海は松浦を見つめる。 髪に触れられた松浦は、不意に微笑む。 (可愛いなあ) カーテンの隙間から入る光に導かれて、外を見ると朝焼けで見事に真っ赤になっている。 今日も一日、快晴になりそうだ。 こんな満たされた気持ちなら、一緒に住む日まで何の不安もなく過ごせそうだ。 明日からも幸せな気持ちで過ごせられる。 松浦が褒めてくれた最高の運転を続けながら、バスの街を走るのだ。 【了】

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