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第55話 飛鳥井一族集結
一頻り眠り、朝には目を醒ました
久し振りの睡眠だった
榊原は、中々康太を手放せなかった
この温もり……この愛しい存在を手に出来た幸せを噛み締め、手に抱いていた
「伊織、力哉に真贋の衣装を持ってくるように電話を入れてくれ
伊織の衣装もいるな
ソファーに出して来たよな?」
「はい。ソファーに出してあります
寝室以外は鍵がかかってないので、持ってこれます。」
「なら、電話入れて。」
「電話が終わったら、キスしてくださいね。」
榊原は、力哉に電話を入れた
すると、力哉は二人の真贋の衣装を持って、菩提寺に向けて走っている…と、言った
榊原は、了解し電話を切った
「康太、力哉は、もうこっちへ向かって車を走らせてます。」
「なら、瑛兄達も、そろそろか。」
康太はそう言うと、榊原にキスした
「家に帰ったらな…伊織。」
「解ってますよ。
此処は飛鳥井家の菩提寺
不埒な事など出来はしません。」
身支度を整えて部屋を出ると、荷物を持って部屋を出た
そして駐車場へ向かい荷物を車の中へ入れると、瑛太の黒塗りのベンツが走ってきた
駐車場に車を停めると、瑛太は車を降りた
そして目の前にいる愛しい弟に駆け寄り、抱き上げた
「康太、怪我はしてないか?」
抱き上げ、頬にキスを落とした
「瑛兄、伊織が怪我した
儀式の最中に横槍を入れた奴がいた
龍騎が少し治して行ったが、獣の傷だから完治には至らなかった。」
康太が言うと瑛太は、康太を下ろし、榊原に近付いた
「伊織……怪我をしたのですか?」
「ベヒーモスみたいな怪物が現れて、突進された時に、腕を切り裂きました
でも康太が雷光に乗って来てくれたので、命までは落としませんでした。」
「伊織……後で医者に見せましょう。
何かあったら大変です
しかし…儀式の邪魔など……出来るとしたら飛鳥井の人間しか無理ですね…」
「伊織は奥義の間にいたかんな、伊織を……
真贋の伴侶を狙ったのは、明か。
奥義の間を、知ってる奴しかいねぇわな」
瑛太は静かに怒っていた
「真贋の伴侶を亡き者に?
………………と言う事なんですね?」
「オレの伴侶が儀式をやるのを知ってたのは、菩提寺の人間と飛鳥井家の人間だけだ
横槍が入るとすれば……菩提寺に関わる人間のみ
しかも切り裂いて焼いてやったから、相手は無傷ではいられねぇけどな!」
康太は笑った
伴侶を傷つけられて黙ってる気は更々なかった
「オレの伴侶を亡き者にすると言う事は、真贋を亡き者にされたも同然。
伊織の波動がこの世から消えたら、オレは後を追う
必ずな。違えはしねぇ約束だかんな。」
瑛太は………康太の言葉の重さを…噛み締めていた
「オレが死んだら、死体の山を目にして、飛鳥井の奴等はどうする気だ?」
と、康太は唇の端を吊り上げ笑った
康太が瑛太と話していると、力哉の車が駐車場へと入ってきた
力哉も車を停めると、車から降り、康太に抱き着いた
「無事で良かった……」
と、吐き出し……泣いた
待っているしか出来なかった力哉の苦悩が伺い知れた
「力哉、オレは死なねぇよ。
伴侶やお前等を残して逝けるかよ!」
康太は力哉が泣き止むまで抱き締めてやった
そして、泣き止むと体を離し、瑛太に向き直った
「瑛兄、行こうか
オレは、着替える。
瑛兄達は、本殿の準備にかかってくれ。
力哉、一生と慎一が爆眠してる起こして手伝わせろ!」
康太は力哉から対の真贋の衣装を渡してもらい、宿舎に戻った。
力哉は一生と、慎一を起こす為に、宿舎へと向かった
「この部屋だ
猛烈なキスで起こすのは慎一には目の毒。
一生に、逢いたいのは解るが、慎一の存在を忘れて始めるなよ!」
康太が言うと力哉は「そんな事しません!」と怒った
康太は笑いながら、隣の部屋に入っていった
宿舎の部屋に入ると鍵をかけた
「伊織、着せてやろうか?」
康太が対の真贋の衣装を持って言う
榊原は笑って「お願いします。」と、頼んだ
康太の目の前で榊原は全裸になった
全裸の榊原に白い襦袢を着せ、黒い着物を着せ、袴を履かせ……着せ着けて行く
そして……最後に飛鳥井の紋の入った紋付きを着せた
「榊原の紋じゃねぇのは申し訳ねぇな」
「康太の対の衣装だから飛鳥井しか入れられないと義母さんが言ってくれました。
僕は気にしません。
いっそ康太の籍に入っても良い位ですから。」
「伊織……それはよそう
お前に背負わせるのが重くなる。」
「僕は構わないと思ってます。」
「養子は止めとこ……オレの息子になる気か?」
「それは………嫌かも。
僕の奥さんは優しくない。」
「優しいだろ?
何時も優しく舐めてやってるだろ?」
「……犯されたいですか?」
康太は慌てて離れた
榊原は、笑って康太の服を剥ぎ取った
そして、同じ様に真贋の衣装を着せてやった
「さてと、着替えたしな
行くぞ伊織。
何があっても、この命がなくなっても
オレの伴侶はこの世で一人
榊原伊織、唯一人。
胸をはって睨み付けてろ。」
「当たり前じゃないですか!
康太の伴侶は、この世で唯 一人。
僕は…君と…ずっと共に在ります
君が転生するなら、僕は君の魂に自分の魂を結びます
来世でも解るように魂を結びます。」
榊原がそう言うと康太は驚愕の瞳で榊原を見た
「伊織……お前……」
榊原は、笑って「愛してますよ康太。」とキスを落とした
「さぁ、行きますよ。」
榊原に促され、康太は気合を引き締めた
そして榊原と共に宿舎を出て、本殿へと向かった
本殿で住職が康太に頭を下げ出迎えた
康太は住職を睨み付けた
「真贋に牙剥くつもりなら、此処で消す…」
康太は吐き捨てた
「真贋あっての、菩提寺
貴方様に牙を剥いて、今世を生きるつもりはありません。
私は飛鳥井の菩提寺を守っているのです。」
住職は毅然と答え胸を張った
「ならば、この寺の中に……牙を剥いた反逆者がいる。探せ!
探してオレの所へ連れて来い!
オレの見る反逆者と違えれば、お前は消す。良いな?」
康太は言い捨てると、住職の横を通り過ぎて行った
飛鳥井の一族が、ぞろぞろと集まる中、康太は本殿へと向かう
目の前を通り過ぎる少年が………真贋だと気付き……一族の者は慌てて頭を下げた
「伊織、腐った人間が集まって来たぞ。」
「康太……」
康太は唇の端を上げて……不敵に嗤った
スタスタ歩き本殿広間に入ると、康太は一番前の中央の席に君臨した
胡座をかいてつまらなさそうに、周りを見渡した
「瑛兄、何時の集合だ?」
康太が聞くと、瑛太は「午前10時開始に御座います。」と述べた
時計を見ると、9時58分だった
「瑛兄、10時ジャストになったら、菩提寺の門を閉門し、ネズミ一匹入れぬ様にしろ!」
瑛太は、住職の元へ行き、閉門を告げた
閉門……即ち、今後は誰も入れぬし、出られない密室を作り出すと言う事になる
そして……送れて来た人間は入れぬ事となる
参加出ないとなると、今後一切…飛鳥井の真贋の恩恵は受けられない事となる
飛鳥井の菩提寺は紫雲の住む山を囲う様に高い塀が続き、正面正門しか入り口も出口もなかった
その正門を閉められたら……何処から入れも、出れもしなかった
瑛太は閉門した事を康太に告げた
康太は瑛太のスーツの内ポケットから携帯を取ると、電源を切った
「遅れて来たら、飛鳥井真贋の恩恵は一切受けられないと号令出したのだろ?」
康太が問う
「はい。貴方の申したまま号令を出しました。」
「ならば、文句は聞くな
名簿を取ったんだろ?」
「はい。正門に入って直ぐの所で記帳させました
書いてなかったは、通りません。
書かぬ者は、決席と見なすと申しました。」
「瑛兄は、ドテンと総代の席に座ってろ!
決して前に出るな!
絶対だぞ!
例えオレが刺されても!
出て来るのは許さない。」
「康太……貴方は何を考えてるんですか?」
「適材適所、見極める為にオレは此処に座っている!
そのオレが言うんだから聞け!」
瑛太は頭を下げ……総代席に座った
康太は笑って榊原に声をかけた
「オレはちぃさぃからな、白い真贋の衣装を着ていなくば、お前が真贋だと思うな。
七五三並の可愛さだからな、オレは。」
康太はクスクス笑っていた
榊原は伴侶として、真贋の横に添うように座っていた
「力哉、司会をしろ。進めろ!」
康太が声をかけると、力哉は立ち上がり康太の斜め後ろに立った
力哉はマイクを持って、司会を始めた
「飛鳥井一族真贋の御披露目、一族集結の総会を始めたいと想います
遅刻をなさった方は、今後一切、飛鳥井の真贋の恩恵を受けれません
一族に名を連ねる事も出来ませんので、了承してください」
力哉が言うと会場にざわめき広がった
「飛鳥井家の真贋、飛鳥井康太から挨拶が有ります。どうぞお聞きください。」
力哉に紹介され康太がゆっくりとした態度で立ち上がった
そしてマイクを持つと
「腐った飛鳥井の一族に告ぐ!
飛鳥井は1つになる。本家だ分家だと言っている時代は終わった
本家は潰す
それを発表する!
真贋の決めた事だ!
意義は認めん!決定だ!」
康太がそう言うと、本家の人間が立ち上がった
本家 飛鳥井の源治、妻、珠稀、息子、瑛一が、怒って康太の目の前に現れた
「お前は!何勝手な事を言っている!
飛鳥井の本家は今後も一族に崇め奉られて存在すべき家だ!
お前の様なガキに決められたくはない!
ふざけるな!!」
源治の怒りは凄まじく…………
一族は………唖然となった
「総代も総代だ!
こんな真贋に好きに使われよって!
お前に総代を努める資格はないわ!
我が息子 暎一の方が、優れてるわ!
今直ぐに総代を降りろ!
本家を蔑ろにするな!」
源治は言い放った
康太はマイクを掴むと
「飛鳥井家の真贋は、最終奥義
【 昇華 】を手にした
オレが真贋なのは、揺るぎない現実!
もう替えはいない……そうだろ?
一族の者よ?」
康太は一族に問うた
最終奥義まで身に付けた真贋は……見た事すらない
源右衛門も凄かったが……その源右衛門の遥か上を行く
一族は、康太が真贋なのに誰一人異議を唱える者は出なかった
康太は唇の端を皮肉に吊り上げて嗤っていた
「だがオレは飛鳥井の家を、真贋の自分を簡単に捨て去る事も出来る。
本家の瑛一が総代になるならば、オレは飛鳥井の名を棄てる。
飛鳥井の真贋は今世はなしで行くしかないな。
しかも、次の真贋を育てる真贋も存在せずに、飛鳥井は続かぬ。
飛鳥井家は終焉に向かって走って行っている。
では、本家の方、好きになさって下さい。
真贋の席も、総代の席も、貴方達に差し上げます
今後一切、我等は飛鳥井の一族に参加はいたさん
では、失礼する!」
康太はそう言い、榊原に手を伸ばした
榊原は、康太の手を取ると立ち上がった
「飛鳥井瑛太、帰るぞ!」
康太が告げると、瑛太が立ち上がった
清隆も玲香も立ち上がり、帰る支度をした
源治は激怒して康太の前に出て来た
「ふざけるな!
好き勝手な事を言いやがって!」
「飛鳥井家の真贋の奥義の儀式
【 昇華 】を、邪魔したのはお前の息子の暎一じゃないのか!
我が伴侶を亡き者にしょうと企てたのはお前の息子だろ!」
康太は言い捨てた
「飛鳥井家 真贋は軽んじられる存在ではない。
伴侶も然り。
なのに何故、亡き者にしようとした?
オレが呪詛を返したから、術者は死んだぞ
術者は死ぬと同時に、お前の息子の暎一に呪詛を吐き捨てた!
オレが出るまでもなく、お前の息子は呪詛に殺される。
裏崇城家 妖術 幻獣。
オレの伴侶は怪我を負った。
下手したら殺されていた!
許せる筈などはないわ!」
康太は全身を怒りのオーラを惜しみ無く燃え上がらせて怒っていた
その時、無風の会場に風が吹き荒れた
『お前の伴侶を殺そうとした奴は死んだ。
裏 崇城家 当主が詫びを入れたいと言うから連れて来た
門を開けろ!
門の前の人間は蹴散らして追い返した。開けろ!』
と、弥勒の声がした
「力哉、弥勒が正門にいる
連れて来い!」
康太が言うと、力哉は走って正門に迎えに行った
暫くして、弥勒が康太と同じ様な白い着物を着た青年を伴って入って来た
「おう、康太
家に帰ろくとしたら霞が来てたから、トンボ帰りだ!」
弥勒はそう言い、嬉しそうに康太に歩み寄った
「康太、此方は裏 崇城家の御当主 崇城霞殿だ
お前に詫びを入れに足を運ばれた。」
弥勒が紹介すると、崇城霞は、康太に頭を下げた
「私の弟子の者が、貴方の伴侶の儀式に妖獣を送り込んだ
息途絶えて死ぬ間際に、私に詫びを入れる為に思念を飛ばした。
弟子は知らなかったと申した
知らずに言われるまま妖獣を送り込んだ…と
言って事切れた
知らずと謂えど、飛鳥井の家 真贋の伴侶の奥義の儀式の最中に送り込んで良いものではない!
詫びで済まされぬのは重々承知。
でも……謝るしか思い付かぬ。
本当に、申し訳なかった……」
崇城は、康太に深々と頭を下げた
康太は崇城を懐かしそうに見て表情を和らげた
「霞、久しいな。
お前の一番弟子を、オレは切った
伴侶の命を救う為だった……許せ。」
康太が言うと、崇城は康太に抱き着いた
二人は…高校の先輩と後輩だった
崇城が二歳上で、似たような家業で修行時代から良く顔を合わせていた
真贋と妖術、呪術の世界は広いようで狭い
馬の世界に酷似ている閉鎖的な世界だった
「貴方の伴侶を狙ったのですよ!
当たり前です……。
妖術は返されれば命はない……
覚悟の上です。
ですが……私は……何故……茜が……その様な事をしたか…許してくだされ康太殿。」
「霞、落ち着け。」
康太に言われ、崇城は深呼吸をした……
「霞、茜は恋をしてたんだよ
恋人が出来……当たり前の様に……女の幸せを求めた
だがな、その茜の女心を踏みにじった奴が、我が伴侶の儀式を邪魔にする為に、茜に頼んだ
結婚をチラつかせ、やらせた。
それが、飛鳥井瑛一。そいつだ。」
康太が指差した方を……崇城は見た
そして一族も見た
源右衛門は、康太の前に出た
「飛鳥井家がそんなに欲しくば、受け取れ
だが、暎一は……もう呪詛が吐き出されてる
ジリジリ体力がなくなり……死ぬ運命
もう遅いわ!
飛鳥井に本家も分家も要らぬ
お前のその本家に縋り着く執念が息子を呪いに走らせた!
飛鳥井一族全員に問おう!
飛鳥井康太は飛鳥井瑛太が総代でない場合は、真贋を降りる
真贋のいない、飛鳥井本家に着いていく者は居るか!今応えられよ!」
集まりし飛鳥井の一族の中から、手を上げる人間がいた
「宜しいですか?飛鳥井光生です。
お久し振りです、真贋。
私は飛鳥井に本家は不要と常々思っていました
本家の人間は真贋の伴侶の命を狙ったと言うじゃないですか?
真贋を軽んじ過ぎでしょう!
本家だろうか!何だろうが!
真贋に対して、軽んじ過ぎだ!
敬って敬意を持ってこそ、我が一族の真贋の価値はあがる!
軽んじるなら去れば良い
名ばかりの本家など、あっても意味はない!」
と、辛辣な言葉を投げ掛けた
康太は力哉に
「力哉、霞と弥勒を送っていけ
ついでに一生と慎一を飛鳥井の家へ連れ帰れ。
帰ったら戻って来なくて良い。解ったな?」
康太が言うと力哉は弥勒と崇城、一生と慎一を連れて帰っていった
源治は、怒りにうち震えていた
何故……敬われない?
何故……飛鳥井から弾き出される?
飛鳥井の本家が廃れてく
飛鳥井の分家ばかり繁栄して……
何故だ……何故だ………
源治は………胸から短刀を取り出すと、康太へ向けた
康太は嗤って、それを見ていた
そして、何やら呪文を唱えるとその手に妖刀マサムネを握っていた
鞘から抜くと……紅い紅蓮の炎が刃先から燃え上がっていた
「暎一、お前の命は尽きてる
妖獣に化ける前に、オレが昇華してやろう
最期の情けだ
源治、お前の相手は源右衛門だ
オレじゃねぇ……だがオレに刃を向けるなら、一緒に昇華してやるぜ!」
康太の剣が宙を斬る
紅蓮の焔を撒き散らして渦を巻く
「茜の所まで行きやがれ!」
康太が衝波!と放つと……暎一の魂は……空へ上がって行った
飛鳥井の一族は……その目で、飛鳥井家真贋の威力を知る事となった
瑛一は安らかな顔をして……息を引き取っていた
康太は紅蓮の焔で包まれた剣を鞘に納めた
そして、その剣を消すと、後は源右衛門に任せて広間を後にした
その後に、瑛太が続き、清隆や玲香も、広間を後にした
外に出ると、僧侶が一人、住職に連れられて立っていた
「破門しろ
煩悩が捨てられてない。
だから、こんな事になるんだ!」
康太が言うと、住職は深々と頭を下げ
「貴方の仰せの通りに致します。」
と、申し付けた
そして………その光景を笑ってみている奴がいた
黒い髪の毛をツンツンに立たせ……サングラスをして、まるで、ロックのボーカル並みの容姿をした男が笑って康太に手をふっていた
「この破戒僧が、家業を継ぎに来たか?」
「俺は坊主になっても、このままじゃ!
破戒僧上等じゃ!」
ガハハハハッと嗤う
榊原は、康太に「誰ですか?」と尋ねた
「伊織、お前は……逢ってるじゃん…」
「えっ……僕は…ロックが似合う人に知り合いはいませんが……」
「城之内だよ。逢ってんじゃん伊織。」
榊原は………夏に逢った時には……ライオンだったじゃないか…と、苦笑した
「何で菩提寺にいる?珍しいな。」
「お前が滅多に見れねぇ弥勒と紫雲を引き連れて来るって言ってたから、見に来た。」
「見たいなら連れて行ってやるぞ。」
康太は城之内の髪に触った
「いや…恐れ多いって。」
「でも、お前は行く定め
弥勒ん所は今、一人弟子がいる
入るなら今しかねぇそ。
その後は弟子は取らん。」
「ならば、近いうちにな。」
康太は笑って「この会話も聞いてるだろうからな、早く決めねば夢枕に出るぞ
弥勒はお前の覇道を捕らえた」
「ストーカーかよ」
「みたいなもんだ。」
康太が笑うと頭上から『ストーカーと一緒にすんな!』と声が聞こえた
康太は「ほらな。」と笑った
そして「髪を黒くしたんだな?男前になったな。」と、マジマジ城之内を見た
「重い鎧を下ろしたからな。ケジメだ。」
「ケジメを着けたら、迷うな城之内。」
「まだ踏み出せねぇからな
夢枕に立たれたら、お前の所へ行くわ。」
城之内はそう言い、その場を離れた
それと、入れ違いで、康太は源右衛門から呼ばれた
瑛太も家族も源右衛門に呼ばれて、広間の入り口にいた
康太が近寄ると、源右衛門は深々と頭を下げた
「本家の人間の始末は済みました。
一族総勢、真贋は飛鳥井康太
総代は、飛鳥井瑛太と、申しております。どうか、願いをお聞き届けください。」
「源治はどうした?」
「引きました。
幾ら本家と主張しても、真贋を無くして乱世は乗りきれません。
暎一の骸と共に……永久の別れとなりました
源治はもう二度と、飛鳥井とは関わりのない人間になりました
本家も分家もなく、飛鳥井は1つになりました。
1つになった飛鳥井の真贋は飛鳥井康太、総代は飛鳥井瑛太と、申してます
席に戻って下さい。」
源右衛門に言われ、康太は広間に入って行く
さっきまで座っていた席に座ると、一族総勢が一斉に真贋と伴侶に頭を下げた
そして、後に入って来た、瑛太にも深々と頭を下げた
康太はマイクを持つと、話し始めた
「飛鳥井は終焉を迎える手前にある
それを証拠に、飛鳥井の一族は子供が産まれない
何故か解るか?
血が古く濁り過ぎなんだよ。
新しい風を入れねばならぬ
新しい血を入れねば、終焉へと走り出した車は滅びへと一直線となる
その手始めが本家を無くす事だ。
飛鳥井は、この先も残る
絶対に残す!
だから、気合いを入れて、現実から目を離すな!
絶対にだ!以上。」
康太の言葉を聞き終えた一族は拍手を送った
瑛太は何も喋らずマイクを置いた。
康太の言う事が総てなのだと…飛鳥井の人間に教える為に……
一族の目の前に、真贋と、伴侶がいた
彼等は二人の姿を焼き付けて、頭を下げた。
集会は、それで終わった
一族の者は、其々、帰っていった
康太は溜め息を着いた
「どうしたんですか?康太?」
「伊織の姓を名乗る機会が消えた…」
「僕の子供になる気でしたか?」
「それも、魅力的だった。」
宿舎に戻り、真贋の衣装を脱いだ
そして、私服に着替えると、着物を畳んで、包んだ
それを持って、康太と榊原は駐車場へと向かった
康太は榊原の車に乗り込むと息を吐き出した
本当に……長い一週間だった
榊原は、車を走らせた
康太は榊原の肩に凭れ掛かり、甘えた
「康太、夕飯を食べて返りましょう。」
「マトモなモノを食うのは一週間ぶり……
何か感動かも
でも、ローターは遠慮する。」
「持ってませんよ。だから、安心して。」
榊原は苦笑した
「伊織、オレは明日学校に行きてぇんだが…」
「行きたいですか……?
でも1週間お預けですからね…止まらなかったら、諦めて下さい。」
「槇原に留年するぞ!って脅されたんだけど……」
「……僕も留年します。」
康太は笑った
二人はファミレスで食事を取り、飛鳥井の家へ帰って来た
飛鳥井の家の玄関を開けると、聡一郎に抱き付かれた
悠太に隼人に抱き着かれ……
一頻り慰めてから、3階の自室のドアを開けた
そして寝室に入ると鍵をかけた
榊原が、康太を抱き締めながら服を脱がす
康太も榊原の服を脱がせていた
全裸になるとベッドに縺れて重なった
互いの性器を擦り合い重なったまま……イッた
榊原は、「中学生より早いかも…」と嘆いた
康太の顎が苦しげに上がり仰け反る
その喉仏を榊原は、吸い上げた
康太の全身……吸い上げ…確かめるように愛撫を散らす康太をうつ伏せにした
その背中にも……紅い跡を残して行く
開いた脚の内腿を吸い上げると……康太はねだった
「ねっ……入れてぇ……お願い…入って…」
康太の指が焦れて、自分の秘孔に潜り込む
「自分だけ…気持ち良さそうだね…僕も気持ちよくして…」
榊原の指が康太の中へ入り込むと……忘れていた感覚を思い出す
榊原のカタチを、覚えた腸壁が蠢き急かす
びちゃ……ぐちゃ……ぬちゃ…
卑猥な音を立てて、康太の襞が開口を繰り返す
榊原は、ローションを蕾に流し込むと、康太の中へ挿入した
暫く挿入されてなかったから萎んだのか
榊原の肉棒が、張り詰めていたかはなのか‥‥
射精してなかったから大きいのか解らないが……挿入する時に……
康太の秘孔がミシッと、裂けた
シーツに血が流れ…
まるで処女をなくした乙女みたいだった
「伊織……っ……切れた…」
「痛い?……我慢出来ない位……痛い?」
「……ぁぁっ……我慢する……だから掻いてぇ……奥のとこ…カリで掻いてぇ…」
榊原は、ねだられ、奧を掻いてやった
張り出したエラで、康太の腸壁を掻いて擦る
康太は榊原の腰に足を絡め、秘孔を榊原の肉棒で貫かれ至福の時を味わっていた
「ぁんぁん……イイッ…」
康太は声が掠れる位……良い声で鳴いた
榊原は、体力の続く限り……康太の中へ居続け……康太に肉棒を与え続けた
途中で……康太は意識を飛ばした
康太の中から抜くと……白濁に紛れて鮮血も流れていた
無理させた想いが募る
榊原は、康太を浴室に連れて行くと、体を洗って中の精液を掻き出した
そして湯をためた浴槽に康太を入れると、榊原は体を洗い、一緒に浴槽に浸かった。
一足先に榊原は、浴室を出ると、バスローブを着て、ベットのシーツを替えた
準備をしてから康太を浴室から連れてくると体を拭き、ドライヤーで髪を乾かし、肛門の傷の手当をしてから、全裸で布団に入り抱きあって眠った
互いの体温の温もりが心地よい眠りに堕ちて行った
翌朝、目覚めた康太は、榊原の胸に顔を埋め温もりを確めるかの様に抱き着いた
榊原の腕が康太を抱く
「眠れないんですか?お尻が痛いですか?」
「違う。伊織の温もりが久し振りだから…」
康太は榊原の胸に頬を擦り寄せた
「お尻も痛いでしょ?
鮮血が出てました。」
「伊織の大きかったから…」
「康太がちぃさぃからでしょ?」
「ちぃさぃオレは嫌い?」
「君ならちぃさくても、大きくても……どの君でも愛してます。」
榊原は、康太にキスを落とした
「伊織…大きいオレなんて知らねぇよな?」
「奥義の間で、君に良く似たヴィジョンを、見ました。
蒼太さん位の体格してる君に僕は
『僕は…君と…ずっと共に在ります
君が転生するなら、僕は君の魂に自分の魂を結びます
来世でも解るように魂を結びます』
と言って泣いてました……ベソベソと。
あれは、何だったんでしょうね?白昼夢みたいでした。」
「………白昼夢だな。きっと…。
でも伊織ならやりそうだ。」
康太は笑った
「どっちの姿をしたオレが好き?」
「君なら、どんな姿をしていても僕は愛せます
君は僕のモノですから
誰にも渡しません
未来永劫、僕は君と…共にあります」
「伊織…」
「愛してます。」
榊原は、康太にキスを落とした
起き上がり、桜林の制服を着た
久し振りの制服をは………ブカブカだった
「痩せましたね……康太……獣食べてたんでしょ?」
「伊織も痩せた……草、食ってたんだろ?」
「野草です!
僕も痩せましたが…君も痩せすぎです。」
「伊織のズボン……かなり絞めてる?」
「………絞め込んでます。」
二人は互いを見て笑った
「伊織、沢庵食いてぇ」
「食べに行きましょ
お尻は?痛いですか?」
「切れたから……痛い。」
「……今日は休みますか?」
「留年したくねぇもん。行く。」
「なら、薬を塗りましょ?」
「やだ!伊織は痛くするもん。」
「じゃあ、自分で塗る?」
「う~!」
「唸らないの。」
榊原は、康太を抱えるとベットに腰掛け、ズボンを下げ、下着を下ろした
そして手早く軟膏を取ると、康太の肛門に塗り込んだ
榊原の指が……康太の襞を撫でるように塗る
一頻り塗って、掌をティシュで拭くと、康太の下着とズボンを治した
榊原が、掃除と洗濯が済むのを待って、何時もの様に終わるのをリビングのソファーに座って待っていると
隼人が飛び込んできて康太に抱き着いた
「オレ様は、淋しかった!
康太がいない家は淋しすぎるのだ!」
「隼人、お前が忙し過ぎるのと、オレに隠し事してるから、中々顔を合わす機会がないだけだろ?」
康太は隼人を撫でてやった
「康太……オレ様は好きな女が出来たのだ。
子供が出来たから、この近くのマンションに移り住む
産まれたら康太にやるからな
彼女は納得してくれた
オレ様達の子供は次に作れば良いねって言ってくれたのだ。」
康太は「そうか。」と呟き……涙した
隼人の頭を撫でながら、泣く康太を、一生が目にして、慌てて康太の側に来た
慎一も聡一郎も続いて、康太の側に来る
一生は、康太に声をかけた
「康太……何があった?」
「隼人が……愛する人を見付けた……
彼女は妊娠してるらしい……
隼人はこの家の近くに住むそうだ。」
「康太……お前……泣くなよ!
俺まで泣けてくる!」
一生は、康太を抱き締め……泣いた
聡一郎もそっと康太の頭を抱き寄せ……
「隼人……おめでとう。」そう言い泣いた
慎一は一生を抱き締め堪えていた
なんて辛い………現実……
隼人が幸せそうにしてれば、してる程
悲しみは……深まる
「隼人……幸せになれ。」
康太はそう言い……嗚咽を漏らした
神様………何故、隼人の幸せを奪うのですか?
隼人が何をしたと言うのですか……
願わくば………運命が変わります様に…
神様………
掃除と洗濯を終えた榊原が、リビングに顔を出すと………康太は泣いていた
榊原は、康太を抱き上げると「何があったのですか?」と尋ねた
康太は榊原の耳元で……榊原にしか聞こえない声で
「運命の輪が回り始めた……隼人の子が…琴音の魂が根を下ろした…」
榊原は、唖然となった
なんと言う運命……隼人は……
榊原は康太を強く抱き締めた
願わくば………隼人が
これ以上……
傷付きません様に………
仲間全員の願いだった……
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