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第54話 昇華②

朝なのかも 昼なのかも 夜なのかも 何日経ったのかも 解らなかった 疲れて、襲って来ない場所を探して眠り、そしてまた闘う 腹が減ったら、目の前の野獣を倒して食べた 野性児、康太は獲物を狩るのが得意だった 一生も慎一も……それなりに、倒して腹を満たし 榊原と紫雲は……狩る前に…そんなん食べたら腹こわすんじゃないかと……食べれず 山菜を採ったり、果物を食べて空腹を凌いだ 紫雲は「康太は何時も修行の時は……獣や野獣を倒して食べます……。 刀を包丁並に上手く扱い食べるんですよ。 食べる為なら……躊躇しないんですが……すみません。僕は…無理です。」と、榊原に謝った 榊原は「僕も……それは…無理です……。 獣を食べてるんですね僕の康太は……。 そのお口で…キスはしたくないかも……獣……嫌かも… でも…愛する康太を目にした、キスしてしまいますね…僕は…」と……苦悩した 目の前に康太がいれば、抱き締めてキスをする……例え獣を食べたお口でも…… 紫雲は「愛ですよ。伴侶殿。愛すればこそです。」と、落ち込む榊原を慰めた 弥勒は焚き火の前で目を瞑っていた 康太も瞳を閉じていた 「弥勒、今日で5日?」 「星を見たか?明日には出ねばな。」 「風呂入りてぇし、沢庵食いてぇ。」 「違うだろ?伴侶殿と愛し合いたいのであろう?」 「多分……無理…だな…。 オレは眠いと性欲がなくなる 疲れ過ぎて勃起しねぇもんよー 寝る。明日には出て、飛鳥井の集結には、身綺麗に出てぇしな。」 「ならば、ぶっちぎらねばな!」 「人は腐るな…弥勒 長い月日の間に真贋は地に落ちた。 飛鳥井の一族は腐った。 転生してきた甲斐すらねぇ現実に……見捨ててやろうかと思う……時もある」 「人は…忘れるからな そう言う生き物だからな…仕方がねぇよ」 「オレも人間だぜ!弥勒。」 「康太…お前は‥‥人の世に堕ち‥‥ 幾度も幾度も転生して来た筈だ お前の伴侶は……今も昔も……伴侶殿なのか?」 康太は何も言わずに笑った 夜が明ける前に、康太は動き出した 夜明けと共に……榊原も動く 一生と、慎一も、動き出した 「弥勒!オレは今日中に此処を出る!」 康太は、妖刀を引き刷りながら走った 赤い焔が……康太の走る後から燃え上がる 「情念の焔を焼き尽くす……そして昇華する」 「お前の好きにしろ!俺はサポートだ お前の思う通りに動いてやる!」 弥勒も走り、康太に叫んだ 「最終ステージだ弥勒!」 康太が叫ぶと、弥勒は頷いた 最終ステージは……《火炎地獄》 邪悪な魂に立ち向かい……無になり……還す 伊織……オレはお前の側に行く 伊織…… 伊織…… 早くお前に逢いたい…… 康太は目を瞑り………心の中に愛する男を思い浮かべた 伊織……愛してる 伊織…… 榊原は、ふと名前を呼ばれた気がして、天を仰いだ 康太……早く君に逢いたい…… 榊原の想いも……唯1つ……… 早く愛する康太に逢いたい……それだけだった 「伴侶殿、最終ステージです 無間地獄です 魑魅魍魎が……蠢く世界の浄化です 還してあげなさい……行きますよ。」 紫雲に言われ榊原は、頷いた 一生と、慎一の、従者の義を唱える儀式は……終わっていた 二人は、総て攻略して、康太と榊原を待っていた ………が、不眠不休の体には……爆眠しかなかった 一生と慎一は、がーがーグーグーイビキをかいて眠っていた 「弥勒、オレは優しくねぇかんな 浄化の焔で焼き付くし昇華する 撃破を使う。力を貸せ。」 撃破……弥勒は言葉をなくした 焼き尽くすのは解るが……… 焔を渦巻かせ、燃え上がらせ、火力を強くした焔の中に撃破を送り………爆発させると言うのだ 「跡形もなくなるぞ!」 弥勒が溢す 「知った事じゃねぇ! 弥勒、時には掃除をせねばな 塵も積もるとゴミになる。」 なんつう理論なんだよ……弥勒は目眩を感じた 「康太だもんな。仕方がねぇか。」 だが、相手が飛鳥井康太なら……仕方がない 康太だから…… 康太は赤い焔を巻き上げ、刃先を地面に着け走った 「弥勒風を起こせ!」 弥勒が風を呼び起こすと、焔は巻き上がり火力を増した 康太は「 撃破!!!」と爆発させた。 辺り一面……浄化の焔に焼かれ……舞い上がる 康太は刃先に意識を集中して力をためた そして、一陣の風を巻き起こし天を斬った すると……焔が天に舞い上がり吸い込まれて行った 康太は一掃してニカッと笑った 榊原が無間地獄に足を踏み入れると…… 魑魅魍魎以外の存在が暴れていた ゲームか何かに出て来るベヒーモスの様な大きな怪獣が……暴れていた 榊原は「えっ…嘘…あれを倒すのですか?」と、思わず呟いた 紫雲は慌てた こんな予定は無かったから…… 「伴侶殿…あれは予定には有りません…」 紫雲に言われ……榊原は、唖然とした 「なら…僕は…倒す術は知りません…」 紫雲は榊原の手を取り……走った ベヒーモス並の怪獣が…… 動いた二人にギロッと目を向け近付いて来た 紫雲は空間から出ようと……試したが…無理だった 「伴侶殿……何らかの力が加わり…修行を書き換えられてしまった… 出る術は……ありません。 ですが、私は命に替えて伴侶殿を康太の元へ届けます この命に変えても必ず!」 紫雲は結界を張った 無数の結界を張り巡らせ…対抗するが…… 時間稼ぎはそんなに出来ないのは解っていた 「伴侶殿…我が遣られたら…最期の力を振り絞って、貴方を康太の元へ飛ばします」 「紫雲……僕は…最期まで諦めません 僕の康太は最期まで諦めたりはしません。 此処で僕が諦めたら、康太の伴侶を名乗れません! ですから、僕は…諦めません!絶対に!」 榊原は、剣を構えた 康太……僕は…君のいない場所で死にはしません 康太……僕は…君のいる場所に帰ります ベヒーモスが突進して来た…… 榊原は、前を見詰め、康太を思っていた 紫雲の張った結界がバシバシ音を立てて破られて行く 紫雲は、榊原を背中に隠した 物凄い衝撃を受け……紫雲と榊原は、飛ばされた ベヒーモスの牙が……榊原の左腕を掠め切り裂いて行った 「っ……うっ……」 痛い……痛みはちゃんとあり、傷を負っていた 現実離れした世界にいた所為か…… 痛みも……作り物の感覚でいた この時、榊原は、真剣に康太に逢う為に、何とかしなければ……と焦った ベヒーモスばりの怪獣が唸りながら後ろ足の砂を蹴っていた 淀が、滴になり、鼻息で砂嵐が舞った 加速を着けて……突進してくる 榊原と、紫雲は避けるために走った 物凄い塊が突進してくる 榊原は、息を飲んだ 康太! 僕の康太! 君のいない場所に行きたくはない 僕が逝ったら……君も来て下さいね 『僕は…君と…ずっと共に在ります 君が転生するなら、僕は君の魂に自分を結びます 来世でも解るように魂を結びます』 ??????何だ?今のヴィジョンは? その時、天空が裂け……爆音が響き渡った 「オレの伊織に近寄んじゃねぇ!!」 雷光に乗って……康太が空から降って来た 康太の刀がベヒーモスを半分に切り裂き焼いた 「オレの伊織を傷付けやがって! 万死にあたいする。この仇は必ず討ってやる!」 榊原の目の前に! 康太が現れた!! 康太は自分の白装束を破くと、榊原の傷口を結んだ 「弥勒!ここから出せ!」 康太が言うと、扉が開いた 紫雲は康太の前にひざまずいた 「同調されましたか?」 「シンクロじゃねぇ。 伊織のピンチには鼻がきくだけだ」 康太はニカッと、笑い、榊原の手を取った 榊原の目の前に、康太がいた 榊原は、康太を抱き締めようとした が……康太はスルッと手の中から擦り抜けた 「康太?何故?」 「風呂に入ってねぇかんな汚ねぇもんよー」 「僕は…1ヶ月だって大丈夫って言ったでしょ!」 榊原は康太を腕の中に抱き締めた 「伊織、キスは止めとけ 獣を食ってるかんな。] 「……君のお口なら……堪えれます!」 榊原は、そう言いキスした 「さぁ、伊織、外に出るかんな! オレは眠いんだ!沢庵も食いたいんだ!」 「僕は食べたくないんですか?」 「食べるには体力もねぇし、場所もねぇかんな! 今夜は此処で泊まる そしたら明日は飛鳥井の一族が集結する それまで待て。」 「待ちますよ でも抱き締めて寝させて…流石と限界です。 君が側にいないと眠れない…」 「なら、出よう 一生も慎一も待ってるかんな。」 康太と榊原は、奥義の間を外に出た 奥義の間を出ると、住職が康太に深々と頭を下げた 「お帰りなさいませ 流石は稀少の真贋。 自分の最終奥義を唱える儀式を6日で出て来て、伴侶を助けに行かれるとは…… お二人とも最終奥義【 昇華 】を胎内に納められた事を、しかとお見届け致しました。」 住職はそう言い、康太と榊原の剣に手を延ばした 「その剣は、貴方の一部となり呼べば出て来るでしょう‥ 前回の剣は、もとある場所に還りました。 これからは、この剣をお呼び下さい。」 と言い深々と頭を下げた 康太は鋭い瞳のまま住職を視ていた 弥勒は儀式が完遂するのを見届け 「ならな。康太 俺の役目は終った 楽しかったぜ康太 修行時代を想い出した。 昔も……今も……愛するのはお前だけだ。 この先も俺はお前の道を邪魔する者は排除してやる。」 と言い、康太を抱き締めた 康太を離すと、榊原に深々と頭を下げて、弥勒は帰って行った 紫雲は自らの力を使い榊原の傷を癒してから、康太に向いた 紫雲の掌が康太の頬を撫でる 「愛しき我が想い人……また逢う日まで、元気でいてくだされ たまには逢いに来てくだされ。」 康太を抱き締め……紫雲も帰っていった 住職は康太に頭を下げると 「今宵は本殿横の宿舎に泊まられます様に! 明日、飛鳥井の一族が集まります それまでは、ゆっくり過ごされよ」 住職は僧侶に案内を頼むと、奥へ帰って行った 僧侶は頭を下げると、宿舎まで案内してくれた 宿舎には一生と、慎一が爆睡していた 康太と榊原の部屋はその隣で、一応、部屋に浴室も着いた1DKの部屋だった 康太と榊原は、浴室に入り、まずはお湯に浸かった 小さい浴槽だから、榊原は、康太を上に乗せて重なってお湯に浸かった 康太は榊原の傷をなぞった 榊原の腕にはベヒーモス並の怪獣の牙に裂かれた傷跡があった 紫雲が少し治癒したが、完治はしていなかった 「痛いか?オレの伊織に傷付けやがって!」 康太の怒りの炎は燃え上がっていた 「傷した時は痛かったですが、今は少し痛みが引いています でも、君が傷してなくて良かったです……君が怪我してたら僕は…」 榊原は、康太を抱き締めた 「オレには伊織がいる 勝手に死んだりはしねぇ 逝くなら一緒だ。」 「康太……」 榊原の手付きが……怪しくなり、康太は風呂を出た 榊原は、康太の体を洗い、自分の体を洗い、お湯に浸かり、お風呂を出ると、荷物から出した歯ブラシで歯を磨いた 押し入れを開けると、布団が二組あり、床に敷いて眠った 実際、布団は一組で良いのだが、二組敷いた 康太と榊原は、隙間もない位抱き合い眠った 流石に……榊原も性欲はわかない程に疲れきっていた 命の危険を感じていたのだ 疲れぬ筈などないのだ 榊原は康太の温もりを腕に、眠りに着いた

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