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お揃いの黒子
幼馴染の康彦は、何でも俺の真似をしたがる奴だった。
「あっ、悠くん!髪切ってるー!」
「暑苦しくなってきたからな」
夏場に俺が髪を切ると、大抵3日以内には同じように髪を切ってくる。
「その服、イイね!どこの?」
「あー、これ?**の新しいパーカーだよ」
新しい服を着ていると、大抵1週間内には同じショップで買っている。
そんな康彦に、周りの友人たちはウザったくないか?と俺に聞いてくる時もあった。
正直そんなにウザったくない。
昔からだし、可愛い弟分の康彦のやることだ。
ひとりっ子の康彦が「兄貴」の様に俺を慕ってきてくれているんだと、思っていた。
「あれ、悠くん、こんなとこに黒子 があったんだねえ」
放課後、アイスを食べながら歩いていると康彦が驚いた様に指を差す。
右腕の手首近くの裏側にある黒子。
以前はなかった様な気がするのだけど、黒子ってのは気がついたらそこにある。
「…ホントだ。俺も気がつかなかったよ。ゴミがついてるのかと思った」
「あはは、悠くんらしい」
言いながら、康彦はじっと俺の腕を見ていた。
それから3日後。
康彦の右腕に絆創膏が貼ってあるのを見つけた。
「怪我した?」
「あ、ちょっとね。でもすぐ治る」
ふふっと笑う康彦。
その時俺は気がつけばよかったんだ。
康彦の目が、少しだけ遠くを見ていることに。
「悠くーん」
それから2日後。
家の前で、康彦が手を振っていた。
「何だ、急に。話したいことって」
「見て見て、できたんだよー」
何が?と言う前に、康彦は右腕の絆創膏を剥がす。
少し腫れた様になっている突起の先端に黒く印のようなモノができている。
「悠くんとこれで、お揃いだね!」
ニコニコしながら康彦は自分の腕をウットリと見る。
まさか…
「お前、俺の黒子を見て作ったのか?」
「うん!太い針で突き刺してその上から鉛筆でさらに突き刺して…」
結構血が出たんだよ、と言う康彦に俺は正直ゾッとした。
「そんなことしてどうすんだよ!炎症でも起こしたら…!」
現に今腕が少し腫れている。
「だいたいお前なんでいつも俺の真似するんだよ!」
狂気を感じて俺は康彦に食らいつくと、康彦はきょとんとして笑う。
「だって好きな人の好きなもの、共有したいじゃん。それに黒子が同じとこにあったらいつも一緒にいる様な気がするじゃん」
康彦の目は、俺を見ている様で遠くを見たまま。
「いつも一緒だよね、悠くん」
【了】
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