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指輪とネクタイ

祐司とはかれこれ五年、一緒にいる。 社会人になったその年に、たまたま仕事の取引先の営業だった祐司に僕がまず一目惚れ。 時間をかけて仲良くなってみると祐司はノンケじゃなかった。 それから先はとんとん拍子にことが進んで、付き合って半年後には同棲を始めた。 五年という節目の年に、祐司は僕に指輪をプレゼントしてくれた。 と言っても結婚指輪みたいなものではなくもっとかっこよくてイカツイやつだ。 僕の好みをよくわかってくれる祐司。優しい祐司。エッチも相性が良い。 そんな大好きな祐司からもらった指輪。 それが、見当たらないのだ。 探し始めてもう三日間になる。 いつもは指輪をせずに引き出しに入れていた。 久々に外でデートすることになり、指輪をつけようと引き出しを開いてみたものの、あるはずの指輪がなかったのだ。 真っ青になった僕はあちこち探しているのだが、出てこない。 このまま無くしたら祐司は怒るだろうか。呆れるだろうか…別れてしまうだろうか… あああ俺のバカバカバカ! 半ベソをかきながら探していると、仕事から帰宅した祐司に呼ばれた。 「おーい、誠」 「あ、ああ、お帰り」 「お前、今指輪持ってる?」 雷に打たれたように僕はビクッと身体を揺らす。 ヤバイ、バレたか? 僕は覚悟を決めて話そうとした瞬間。 「靴箱の下に転がってたぜ」 「!」 僕は思わず口をぱくぱくさせてその場に蹲み込んでしまった。 「よ、よかったァ〜」 「どうした?」 *** 「なんだ、探してたのか」 僕は指輪が見つかって安堵して泣いてしまった。そんな僕の頭を優しく撫でてくれる。 「祐司、怒って別れるかなって…」 「ええ?そこまで話が飛躍したの」 コク、と頷くと祐司はギュッと僕を抱きしめる。 「それくらいじゃ、別れません」 手に持った指輪を指にはめてくれる。まるで結婚式の様だ。 「指輪なんて形だけだからね。俺はお前がいないと生きていけないよ」 祐司はそういうと優しくキスをしてくれた。 僕にはもったいないくらい優しい祐司。 大好きだよ。 *** 「え?僕があげたネクタイがなくなったの?」 「うーん。どこかにあるはずなんだけどなあ」 祐司が頭をかきながらクローゼットの中を探す。 おっかしいなあ、と言いながら。 「ネクタイがなくなるなんて、どこで外したんだよ!見つかるまで口きかないからね!」 僕がそう言うと、 「お前、人には厳しいなあ」 祐司は苦笑いしながら呟いた。 【おしまい】

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