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第1話 天使、ウサギと化す!

「おい、なんでそんな格好してんだ?」 「レオさんっ!ぼくかわいいですか?」 「かっ、……」 「ん?ぼく、かわいくないの?」  目のやり場がない、とはこういうことか。バイトから帰ってきたばかりのレオはベッドに腰掛けるとため息をついた。  今日のシフトは長すぎた。立ちっぱなしでふくらはぎも痛い。夕飯なんて食べる元気もなく、ただ横になって眠ってしまいたかった。  それなのに、だ。  レオの寝室の扉が閉まるのを聞いたガブリエルがダーンっと扉を開き元気に登場したのだ。  はっきり言って、今のレオにこの天使の相手をしているエネルギーは残っていなかった。 「いや、かわいいけど、なんでそんなに短パン短いんだ?太腿も丸出しだし、これじゃ腹が冷えそうじゃないか」 「そんなことないですよ、だって、この靴下履くから脚はほとんど隠れるんです」 「ニー、ハイ…」  なんで、と聞いたレオの質問にはガブリエルは答えなかった。  唖然としてレオが見つめる中、白ウサギの耳を頭につけ、白いシャツを着たガブリエルは、嬉しそうにくるくる周りレースのついたホットパンツを披露している。  色白の太腿がすらっと伸び、ピッタリとした生地の上から柔らかそうな尻の形がくっきりと分かった。 「そう!んっ!今履いて見せてあげますね!」  ペタッと床に座ったガブリエルは、いそいそとニーハイソックスを履き出した。白ウサギの衣装に合わせて、これも真っ白なようだ。縁にはモコモコのファーがついている。 「レーオさんっ、ウサギさんに見えますか?」  靴下を履いたウサギのガブリエルが出来上がったらしい。  ああ、我慢できるかな、とレオは右手で両目を覆った。一瞬でいいからこの天使(ウサギ)を視界に入れずに、自分と理性と会話をしたかったのだ。 「あぁ、ウサギに見えるよ」 「わーい!ぼくね、文化祭でウサギさんなの!」 「はぁ?」  文化祭でうさぎ  文化祭で、うさぎ  文化祭で、うさ…ぎ?  全く意味がわからない。  はじめてのことではない。いや、正直なところ、いつものことだ。思いついたことを口に出し、そのまま行動に移す。それが、ガブリエルなのだ。 「ガブリエル、ちゃんと説明しないと伝わらないって毎回言ってるだろ?なんで、ウサギなんだ?」 「文化祭で、」 「それは分かった。文化祭で何をやるためにお前がこの格好しなきゃいけないんだ?」  ベッドに腰掛けたレオの膝の上に、ガブリエルは甘えるように座った。質問をしているのに答えを言わずに何してんだ?と、レオは聞きたくても聞けなかった。間近で首を傾げた天使があまりにも可愛かったからだ。 「ふふっ、知りたいですか?」 「ああ、」 「クラスで劇をやるんです!」 「それで、お前がうさぎ役なのか?」 「そう!」  元気に答えたガブリエルの動きに合わせて白いウサギの耳がぴょんぴょんと揺れた。

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