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「昨日のパーティーも取り上げられるかもな」  テレビカメラが何台か入っていたのは、玲も気付いていた。 「拓馬、ほんとにごめん。出勤したらすぐ、もう一度宴会係のマネージャーにきいてみる」 「ああ。俺からも……っ」  言いかけて、拓馬はブーッと勢いよくコーヒーを噴いた。  そのままあんぐりと口を開けて、テレビ画面を凝視している。つられて玲も画面を見た。一瞬にして静止画のように固まる。  画面にはアイスブルーのシフォンドレスを着た玲が、やはり静止画になって映し出されていた。画像がやや荒いが、首にはまだ例のネックレスがかけられ、絢爛たる輝きを放っていた。  ――『サンドリヨンの微笑』 『こちらが問題のシンデレラですか。美しいですね』  パーソナリティーを務める男性タレントの声がスピーカーから流れる。 『総数二百三十七個のダイヤでできたネックレスを残して消えたそうです。ごらんの画像で首にまかれているのが、そうですね』 『これ、全部ダイヤですか? 硝子とかクリスタルじゃなくて?』 『鑑定の結果、全部本物の、それもかなりハイクラスのダイヤだそうです。総カラット数は……』  呆然として画面に見入る二人の耳を、興奮した声が素通りしてゆく。しかし、続く言葉は、睡眠不足の頭を一気に叩き起こした。 『こちらのネックレスは現在周防智之氏が保管しています。そして、落とした本人に直接返却する、というメッセージが周防氏側から出されているそうです』 『確かにこのネックレスの価値を考えると、第三者の手を通すのはリスクがあるかもしれませんが……』 『そうですね。しかし、周防智之氏と言えば、今、最も魅力ある独身男性として注目されている周防グループの御曹司です』

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