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【5】-4
『ええ。麗しの王子という綽名を耳にしたことがある方も少なくないと思います。その名の通り、非常に端整な容貌をした方です。ご覧の通り、お母様は元女優の……』
コメンテーターたちの会話が続き、昨夜の周防の映像が映し出された。
『俳優さんかモデルさんのように素敵な方ですね。そして、こちらの麗しの王子は、もう一度消えたシンデレラに会いたいと思っているようです。そう考えると今後のことが気になりますね』
『ダイヤを残して消えたシンデレラ……。見つかったあとの展開がどうなるのか、期待されます』
ダイヤと玲、周防の映像が再び映し出され、いくつかのコメントのやり取りが続く。衝撃のあまり、永遠に映像が繰り返されているように感じたが、時間にすればそう長くはなかったのかもしれない。
「なんで……」
しばらく言葉を失いテレビ画面を凝視していた。
すでに話題は秋の味覚、松茸の食べ方に変わっていたが、全然頭に入ってこない。
「ちょっと調べれば、うちの商品だってことはわかりそうなものなのに……」
拓馬がようやく口を開いた。
「なぜ問い合わせない。なんで、こんな話になっているんだ。それに、いつ周防氏の手に渡ったんだ」
昨夜の出来事を思い返し、玲は「あ……」と小さな声を立てた。
(あの時だ。あずまやで……)
周防にキスをされている時、首から何かが滑り落ちた気がした。その時に……。
しかし、なぜ周防が……?
玲からネックレスを奪ったのは、おそらく周防だ。けれど、もし盗むつもりだったのなら、こんなふうに表に出すのはおかしい。
「周防で保管してることはわかった。とりあえず、本当になくなったわけじゃないなら、一安心だ……」
ふうっと息を吐いて、拓馬はおもむろにコーヒーの被害を確認し始めた。ネクタイやシャツは無事だとわかると、ぼうっとしたままの玲の手から布巾を取って、自分であたりをざっと拭く。
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