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「玲、大丈夫か?」  玲はまだ静止画のままだった。 「あとで向こうのスケジュールを確認して、直接俺が周防氏に会ってくる。拾ったのがあの人でよかったよ」  そうなのかもしれない。 「おまえ大丈夫か。なんか、顔が赤いぞ。昨日あんまり寝てないんだろ?」 「大丈夫……」 「開店初日で店も大変だと思うけど、無理しない程度に頑張ってくれ」  インターフォンが鳴り、迎えのクルマが到着したことを知らせる。拓馬は先に本社に出勤するため、席を立った。 「周防氏は、しばらくの間ホテル内の部屋で人に会うらしい。アポを入れておく。ホテルに行ったら、そのあと店にも寄るから」 「うん」 「いよいよ今日からだな」  拓馬がにっと笑う。 (そうだ、今日から……)  ホテルで働くのだ。『ジュエリーSHINODA・周防インターナショナルホテル支店』が今日から玲の職場になる。新規開店に伴い本店から異動になった。  人事的に最良の異動だと拓馬は言うが、玲への配慮と思いやりも多少は含まれているはずだ。  辞めたくて辞めたわけではなかった。  玲の最初の就職先は『周防インターナショナルホテルズ&レジデンシャル・ホールディングス』だったのだ。

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