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【21】-5
そして、王子に出会い、恋に落ちた。
『ドレスや馬車は外見にすぎないんだ。立場や経歴、その人の生い立ちや経済力、人種、性別、国籍、宗教、年齢なんかも、人の本質とは別の次元にある』
『ほんしつ?』
『その人の優しさや、心の美しさのことだよ』
誰かを好きだと思う気持ちもそうだと教える。
『俺、トモが好きだよ』
玲が言うと、トモはにこりと、とても綺麗な笑顔を見せた。
『僕も、玲が好きだ』
『大好きだよ』
玲は、トモのそばに行き、のびあがって硬い唇にキスをした。トモは一度身を引き、次に少し長いキスを玲に返した。
『玲……』
髪を撫でられ、心臓がドキドキと大きく音を立てた。
『トモ……。好き、大好き……』
『玲……』
ぎゅっと抱きしめられて、泣きたいような、けれど同時にどても幸せな気持ちになった。
ただ、好きで、好きだという気持ちだけで、何をどうすればいいのかもわからないまま、広い背中に手を回していた。
『玲が大人になったら……』
トモが囁いた。
大人になって、もしまた会える日が来たら、その時はずっと一緒にいようと約束した。
『番 のユリシスを誰かと一緒に見ることがあれば、その人は運命の相手だと僕の母が言っていた』
『それも、青い蝶の言い伝え?』
『さあ……』
トモは笑った。
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