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【22】-3
今、そばまで行って、聞いても大丈夫だろうか。
ひと言でいい。トモは生きてここにいると、それだけ聞いたら約束の時間まで大人しく待てる。時間があるし、一度拓馬のマンションに戻ってスーツに着替えてくることもできる。
けれど、カメラとフラッシュで溢れる人だかりが周防のまわりにはできている。
躊躇していると、にこにこと嬉しそうな笑顔を玲に向けたまま、周防がリンカーンの後部座席に近づき、ドアを開けた。
中の人に何か話しかける。
周防に手をとられ、赤いドレス姿のスラリとした女性が姿を現した。再び大量のフラッシュが瞬く。
いくつもの白い光を浴びて、女性が周防の隣に立った。背が高くほっそりとして、とてもスタイルの美しい女性だった。
周防に何か囁かれ、彼女は玲のほうに顔を向けた。そして、にこりと微笑んだ。
どくんと心臓が大きく脈打つ。
何がどうなっているのかわからなかった。
どうして、二人は、あんなに嬉しそうに笑っているのだろう。
『シンデレラが見つかったって本当?』
はっと目を見開く。次の瞬間、玲は全てを理解した。
シンデレラとは、彼女のことだ。
彼女が周防の「花嫁」になるのだ。
だから、もう『サンドリヨンの微笑』は必要なくなって、玲に、拓馬に返すことにしたのだ。「レイ」を待つことも探すこともしなくてよくなったのだ。
心が凍り付く。
まだ二人は玲を見ている。
美しい女性だった。
周防の「花嫁」にふさわしい、華やかで、あでやかで、それでいて大人の落ち着きがあって、優雅で気品に溢れていて……。
そして、光り輝くように美しい。西洋絵画のヴィーナス、あるいは聖母マリアを思わせる甘さと優しさとが漂う、非の打ちどころのない完璧な美貌だった。
マイクを向けられ、彼女は困ったように眉を寄せた。
周防はまだ玲を見ている。
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