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【22】-4
背中を支えるようにして何か囁き、周防はそのまま彼女をエスコートして歩き始めた。
玲は一歩後退 さる。
外側のコリドーにたむろする報道陣や、メインロビーの光の中に立つ人々が周防を見ていた。正面玄関から光の溢れるロビーに入り、女性の背に優しく手を添えて、周防はまっすぐ玲のいるほうへ進んでくる。
周防の向かう方向に人々の興味が向かい始める。徐々に視線が玲にも集まってくる。
「なんで……」
なぜ、玲のいるほうに向かってくるのか、意味がわからない。
華やかに着飾った人々が、モーセに従って割れた海のように周防と女性に進路を空ける。
割れた海の先にいるのは、玲だ。普段着のまま光の塊のようなシャンデリアの下に立っている。魔法が解けたシンデレラ。
玲はまた一歩下がった。
ショップ側の小さな入り口をチラリと見る。
周防に視線を戻し、そして、唐突に走り出した。ざわりと揺れる人の声を背に、狭いドアを抜けてテラスに飛び出す。
「玲……っ」
周防の声が背中を追ってきた。
離れた場所でバシャバシャとシャッターを切る音がして、白い光が玲に向かっていくつも瞬く。
手のひらをかざして光を避け、止まることなくテラスの階段を駆けおりた。最後の一段で足がもつれ、庭園内のサブロードに転がり落ちた。
植え込みのイチイに中に転がり込む。赤い実が弾けて、玲の服と顔を汚した。
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