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【22】-5
周防は追ってこなかった。
フラッシュの光も追ってこなかった。
しばらくその場にうずくまり、息を整えながら、明るく照らされたメインエントランスに目を向けた。
カメラとマイクが一方向に向いている。姿は見えないが、その先には周防がいて、何かに答えているのだろうと思った。
そして、隣には、新しいシンデレラがいるのだ。
周防の心を射止めた美しい人が……。
夜の街が放つ青い光が、細長い窓から流れ込む。
2LDKのうちの、小さいほうの個室が玲の部屋になっていた。『周防レジデンス』はとても高級な賃貸物件なので、小さいといっても七帖ある。
クローゼットも十分な広さで、ベッドしかない部屋は少しガランとしていた。
眠れないまま横になり、床に落ちる青い光の影を見ていた。
水の底のようにゆらゆらと揺れる。風の音が遠くに聞こえる。
性格が悪くて、何を考えてるのかわからなくて、子どもっぽいやきもちを焼いて意地悪をして、勝手に食事の約束をして、すぐキスをする。
好きじゃない。
好きになっても、仕方ない。
瞼を閉じると睫毛が濡れて、青い蝶の残像が通りすぎた。その影を追いながら、いつの間にか浅い眠りに落ちていた。
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