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朝、目覚めたら 2
すると千秋が僕の寝ていた場所に手を伸ばし僕を探すようにパタパタとシーツの上を移動する。
「……しゅうへ?」
起こしちゃったかなって思ってそのまま見守るもやはりまだ千秋は寝ているようで、寝ぼけながらも僕を探しているみたいだった。
そして僕を探し続ける千秋の指先に手をつくと、その指先が触れた瞬間数度確認するように触ってそのまま手を掴まれて引き寄せられて、隣に寝かされると丁寧にシーツまでかけられる。
「しゅ、へ……布団、跳ねのけてる」
跳ねのけていたわけではないのだが、千秋のこういうところがお兄ちゃんなんだよなと思いながら寝ぼけて舌足らずな言い方に目を細めた。
僕の腕に寄り添いながら千秋は今、どんな夢を見ているのだろう。
いつもはキリッと上がってる眉が下がっていてそれだけでも特別な気がして、たまらなくなってもう一度キスをした。
「夢の中でも僕と一緒だったらいいなぁ」
あまり二度寝はしないのだけど、僕も千秋の夢が見れたらいいなぁと思ってもう一度目を閉じてみることにした。
夜明けにはまだ時間がある。
千秋の寝息を聞いていると、自然とまぶたが重くなってきた。こんな穏やかな気持ちは千秋と付き合い始めてから知ったこと。
隣で眠っている千秋を抱き寄せると、千秋が目をこすりながら僕を見た。
「さむいのか?」
「うん」
寒くないけど頷いたら千秋は半分寝たままくすっと笑い「腹出してるからだ」と言いながらゆっくりと腕を僕の背に回した。
それだけで胸がいっぱいになったようで思わず抱きしめる力を込めてしまう。
「くるしい」
「ごめん」
でも謝った時にはもう千秋は夢の中にいて、また規則正しい寝息が聞こえてきた。
千秋は温かい。そしてこんな穏やかな時間が愛おしく感じるようになるなんて思いもしなかった。
きっと僕はもっとキミを好きになってしまう。
そんなことを考えながら。
千秋の体温と心地よい寝息を聞きながらもう少し眠ろうと思って、僕はもう一度目を閉じた。
《朝、目覚めたら・終》
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