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トリックオアトリート 1
「じゃあ、カッシーまた明日ねー!」
「お疲れ様でしたー」
今日はゼミのハロウィンパーティーだった。
そして帰りは車を持っている先輩が送ってくれることになり、同乗者の中で比較的会場から近い場所に住んでいた俺が一番最初におろしてもらった。
降りてドアを閉めると俺の立っている側の窓が開いて中にいるみんなが一斉に手を振ってくる。
「じゃあ、ドラキュラくんまた明日」
そう言っているのは運転席に座るフランケンシュタイン風の先輩。
助手席にはフランケン先輩の彼女が不思議の国のアリス姿で座っていて、後部座席には雑なゾンビと明らかクオリティの低い偽者のドラえもんがいた。
「柏木くん、またねー」
「一限遅れんなよ!」
「わかってるって! お疲れしたー」
「おつかれー!」
さっきまで俺も後部座席に座っていたわけだから、よく考えなくてもすごい車内だなと思いながら、まだまだテンションの高いみんなを見送り俺はマンションへと入っていった。
しかし一人になってみるとこの格好はなかなか気恥ずかしいもので、いそいそと部屋へと向かう。
運よくエレベーターでも廊下でも誰にも会わずに部屋の前まで来ることができて、鞄から鍵を出した瞬間にふといいことを思い付いた。
(そうだ。修平のことを驚かしてやろう)
パーティー会場近くで着替えたから修平にはまだ仮装姿は見せていないし、俺のドラキュラ姿にきっと修平も驚いてお菓子を差し出すことだろう。
なんか今日はかぼちゃの蒸しパン作るって言ってたからな。きっとそれが貰えるに違いない。
なんて思いながら音を立てないように注意して静かに玄関のドアを開けると、リビングに電気がついてて修平はテレビを見ているようだ。
これはチャンスだ!
息を潜めてリビングにつながるドアをあけると修平はソファに座ってテレビを観ていた。
そして、そーっと近付いて思いっきり後ろから飛びついてみる。
「トリックオアトリート! お菓子くれなきゃ悪戯するぞー」
すると僅かに身体をビクつかせ驚きながら振り向いた修平は一瞬固まったようだったが、俺だとわかるとにっこり笑って俺の腕を引いた。
「なんだよ引っ張るなよ!」
「仮装してる。もっとよく見せて」
腕を引かれるまま修平の正面に立たされたかと思うと、さらに力を込めて腕を引き寄せられた。
「おっ、とっと……」
いきなり引っ張るからバランスを崩して倒れそうになると、うまい具合に修平に跨って向かい合わせになるように座らされてしまった。
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