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最高のクリスマスプレゼント 2

「え?」 思わず声が漏れると千秋は恥ずかしそうに俯いて様子を伺うように僕を見た。 「……クリスマスのホールケーキを切らずに食べてみたかったんだ。いつも妹と弟と分けるだろ? 分けるのはいいんだけどさ、いつもサンタの人形は咲良ので、トナカイは樹のだったんだ。俺は兄貴だからいいんだけどさ、でも本当は俺も食べてみたかったなぁ……って、思って。あ、でもこれって付き合ってはじめてのクリスマスですることでもないよな」 そう言いながら千秋は耳まで赤くするとまた下を向きながらボソッと呟いた。 「子供っぽいって呆れた?」 伺うように上目遣いで見上げる千秋が可愛くて思わず顔が綻んでしまう。 「いいんじゃない? 僕はお菓子作りも得意だし。千秋に何か作ってあげるのも好きだから、千秋がリクエストしてくれるだけで十分に恋人同士のクリスマスって感じだよ」 「こ、こ、恋人同士とかさらっと言うな! ……は、恥ずかしいだろ」 「僕たちは恋人同士じゃないの?」 「……そう、だけど」 もごもご言ってる千秋も可愛くて、顔を覗き込むなりそのまま啄ばむようなキスをした。 「じゃあ、クリスマスは僕が千秋にケーキ作るね」 「……本当に子供っぽいって呆れてないか?」 「呆れたりしないよ。千秋がしたいこと教えてくれて嬉しい」 目を細めると安心したのか千秋の表情も明るんで、僕の腕を掴む。 「じゃあ、修平は何が欲しい?」 「美味しそうに食べてくれたらそれでいいよ」 「えー! そんなのはいつもじゃん! そうじゃなくてお前も何か欲しいもの言えよ!」 僕は千秋が美味しそうに食べてくれるだけで十分だったけど、それじゃ割に合わないって千秋はいつまでも納得しなかった。 ** あれから何年も経つけど、僕は毎年クリスマスに苺のホールケーキを作っている。マジパンで作ったサンタとトナカイを乗せて。 今年は新たに煙突付きの家みたいなのも作ってみた。 「すげー今年は家付きだ」 嬉しそうにテーブルに頬杖つきながら見ている千秋はまるで子供のように目を輝かせていてとても可愛い。 とっくに成人している男に可愛いとか言うなとこの間も怒られたばかりだから口には出さないけれど、この笑顔を見るたびに作って良かったと思うものだ。 「修平のクリスマスケーキ見たらクリスマス来た! って感じがするな」 「僕も作りながらそう思ってたよ」 「でも不思議だよな。もう子供じゃないのにクリスマスといえばこれがないと始まらない気がする。でもさ、咲良も樹ももうクリスマスにケーキ食べないんだって」 「そうなんだ。じゃあ、僕らも来年からはケーキやめる?」 「え、やだよ。修平のクリスマスケーキは毎年食いたいもん」 そう言いながらフォークを二本持ってきて一本を僕に渡しながら千秋は歯を見せて笑った。 「修平、はやく食おう!」 そして僕は何年経ってもこの瞬間がとても好きだ。 「やっぱり修平のケーキは最高だな! すげー美味い!」 やっぱり千秋の笑顔は僕にとって最高のクリスマスプレゼントだということは間違いない。 《最高のクリスマスプレゼント・終》

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