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ヒメハジメ 4

その言葉に驚いた修平の動きが止まる。 とっさに自分の口を塞ぐがもう遅くて……。 修平に夢の内容を話さざるを得なくなってしまったんだ。 ** 「──へぇ、そんな夢を見てたんだ」 「うん」 「本当は僕に挿れたいの? 夢って潜在的な願望が形になって現れることもあるでしょう?」 「いや、なんていうか」 少し前ならそう思っていたところもあったかもしれない。けど、今の俺の心のうちはとても複雑だ。 すると修平が俺の頬を優しくなでながら微笑んだ。 「僕はいいよ。千秋だったら」 「え?」 「千秋がしたいならそれでもいい」 修平は優しい顔をしていたから本当に良いって言ってくれているんだろう。 修平の気持ちは嬉しいし、俺だって男だから思うこともある。 でも、実は夢の最後に思ったことのほうが鮮明だったりするんだ。 今まで童貞捨てたいって何度も思ってきたことだけど、夢の中であったとしてもいざっていうときに思った自分の気持ちが、多分本心なのだろう。 「……修平。俺さ……夢で修平に入れるってなったときに思ったんだ。その……あの……やっぱり……入れられたいな……って」 「千秋?」 「そりゃ男だし。挿入にも憧れてないわけじゃないけどさ、俺は修平に抱かれるの……す、好きっていうか……安心するんだ。それに、……すげー、気持ち良いし、あの……えっと」 最後はめちゃくちゃ尻すぼみになって聞こえてるのかわかんないけど。 どっちかって言えば聞こえない方がいいけど。 恥ずかしくて修平の胸に顔を埋めたら修平の手が俺の体をなぞるように撫でた。 「………んっ……」 そんな刺激にもビクッとなって、また修平がクスクスと耳元で笑いながら背中に回した腕に力を込める。 「僕に抱かれたいの? そんなこと言っちゃうともうこの先、本当に童貞卒業するチャンスなんか来ないよ?」 低く響く声は直に頭に響いて、腰にくる。 だめだ。俺はもう修平の声だけでもイッてしまいそうなくらいドキドキしてしまう。 「本当にいいの?」 耳元で修平の声が響き、俺が頷くと部屋が吐息で充満するのも時間の問題で……。 「ほんと、千秋って可愛すぎて困るね」 ** 「ふぁっ、ん……あぁっ、あっ」 修平は俺に何度も腰を打ちつけながら耳元で優しく囁いた。  「好きだよ、千秋」  「可愛い」  「千秋、大好き」 そのたびに俺も応えるように「好き」と伝えて修平に促されるまま欲を吐き出す。 そして何度目かの欲を吐き出した後、全身が震えるような余韻と共に脱力し、まぶたがまた重くなってくる。 意識を手放す寸前に修平をなんとか引き寄せてキスをした。 「しゅうへい……すき」 そう言って俺はゆっくりと目を閉じて大きく息を吐く。 すると、手放す意識の端っこで修平の声が聞こえた気がしたんだ。 「千秋。愛してる。今年もよろしくね」 俺もって返事は声にならなかったけど、繋いでいた手の温もりが心地よくて、俺は幸せな気分で眠りについた。 《ヒメハジメ・終》

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