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キスはどこに? 2

** しばらくして千秋の部屋のドアをノックしてみる。 返事はなかったがゆっくりとドアを開け、中の様子を伺ってみると千秋はベッドで丸くなって寝ていた。 そしてその丸くなった膨らみのそばに腰掛けると、また不機嫌そうな声が聞こえてきた。 「……入っていいとか言ってねぇぞ」 「ごめんね。寝てるのかと思って勝手に入ったよ」 「寝てると思ったなら余計に入ってくるなよ」 まださっきのことが恥ずかしいのか言葉尻も強くとげのある言い方がおかしくて、目を細めながら丸く盛り上がった膨らみに触れた。 「ごめんね」 「お前のごめんねは聞き飽きた」 「そんなこと言わないで、僕にもキスさせてよ」 「やだ」 「千秋、僕にもキスさせて」 シーツの隙間から少しだけ覗く髪を優しく撫でれば眉間にしわを寄せた千秋が顔を出したので、僕はその首に優しくキスを落とした。 すると途端にまた頬を赤く染める千秋を見て綻んでしまう。 「……ググるなって言ったのに」 しかし不満げな言葉の割に少しだけ嬉しそうにする千秋に気を良くして、今度は鼻先にキスをした。そして続けて頬にも。 すると今度は焦ったように目を丸くした。 「キスするの一箇所じゃないのかよ!」 「一箇所じゃなきゃだめなの?」 「べ、別に……いいけど」 あの後、僕も調べたら今日は“キスの日”で、キスをする場所にも色々と意味があることを知った。 千秋が僕にしてくれた腕へのキスは “恋慕” という意味があった。 それは千秋が僕の事を恋い慕ってくれているということ。 あのキスにそんな意味があったと知ったときは、心が温かくなったと同時に千秋が愛らしくて堪らなくなった。 だからこそ僕もキスで気持ちを伝えたいなって思ったんだ。 そんな、僕のキスは……。 「つか、首とか怖ぇーよ」 「そう?」 微笑んで今度は唇にキスを落とす。 「まだ、すんのかよ」 「うん。まだ足りないからいっぱいするよ」 首へのキスは“執着”、鼻は“愛玩”、頬は“親愛” そして唇は“愛情”  でもまだ足りない。 「千秋、もっとキス……しよっか」 その日は特に用事ない日だったけど、キスの意味を囁きながらその後もたくさんキスをする日になったのだった。 《キスはどこに?・終》

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