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ポッキーの日 1

修平と何気なくテレビを観ていた時だった。 今日はポッキーの日ということもあって朝から頻繁にお菓子のCMが流れているし、SNSでも盛り上がっている。 そういえば、彼女が欲しいって思ってたとき、いつか合コンとか行ったらポッキーゲームとかしてみたいとか思っていたっけ。 その話をしたとき内川にはめちゃくちゃ笑われたんだけど、合コンというもの自体に憧れていたこともあり、女の子とちょっとエッチなゲームをしていい感じになったり、あわよくばちょっと唇が触れたりなんかしたり……とか想像していた時があったのだ。 しかし、冷静になって考えてみると、これって普通にキスするより恥ずかしいんじゃないだろうかとも思う。 だってポッキーの両端を咥えてお互いに食べていくって、元々その分の距離しか間にないし、どんどん近づいていくのを見るって……。 その瞬間、ふと修平とポッキーゲームしてるのを想像して思わず顔が熱くなった。 (やっぱり、俺にはハードルが高ぇ) ポッキーゲームはハードルが高いけど、なんかポッキーは食べたくなってきたなぁなんてぼんやり考えていたら修平が俺の顔を覗き込んできた。 「ポッキー食べたいの? あるけど」 いきなり修平の顔が視界に入ってきたのも驚いたけど、ポッキーのことを言うものだから思わず考えていることを読まれたのかと錯覚して更に混乱した。 (ポッキーあるの!? つか、なんで俺がポッキー食べたいのわかったの!? まさか修平はポッキーゲームするつもりなのか!? いや、待て待て! そんなの恥ずかしくて無理なんだけど!) 戸惑っている俺をよそに、修平が箱から取り出したポッキーを一本、俺に向けて差し出した。 「え……っと」 「食べないの?」 素直に咥えるべきか否か、戸惑っていると修平は首を傾げ、それを自分で食べてしまう。 そしてテレビを観ながらもう数本、口に運んでいた。 どうやら修平は普通に食べるだけのようで。 (なんだよ! 普通に食うだけかよ!) って心の中で喚くも、そもそも修平はポッキーを食べるかどう聞いただけで、ポッキーゲームをしようだなんて一言も言ってないし、思い込んでいたのは俺だけだ。

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