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第2話

比呂(ひろ)(たくみ)は、タチ同士のカップルだ。歳は2人とも30手前くらい。いつからつきあってるのかとか、馴れ初めとか、詳しいことは何も知らない。それどころか、2人が呼び合うその名前さえ、本名かどうかわからない。 オレが名乗ってるミカオだって、もちろん戸籍上の名前じゃない。お互いに詮索しないこと。それが、ビジネスのルール。 オレはただ2人にときどき呼び出されるだけの、売り専なんだから。 オレと2人とのつきあいは、1年前に始まった。 よく行くゲイバーで、声をかけてきたのが匠。その後ろに、影みたいについてきたのが比呂だった。 2人はオレを買いたいと言ってきた。しかも、最初っから3Pで、っていう話。普段なら断るんだ、そういうのは。なんか怖いし、身体キツそうだし。 でもあの日OKしたのはやっぱ、2人がかっこよかったからだと思う。 二輪挿しとかハードなSMとか、無理なことはしないって約束を、比呂と匠はちゃんと守ってくれた。それどころかすごい優しく抱いてくれて、オレは2人に一回ずつイかされた。高校生の頃からゆるく売りをしてきたオレは、ちょっとイきにくいカラダになってたのに、ホントにすごい気持ちよかった。 「あんた達さぁ、女挟んで3Pにしたらいいんじゃねぇの?孔2つあんだし、同時に突っ込めてもっと楽しいんじゃねぇ?」 心地よい疲労感の中でオレがそう言うと、比呂はその提案をばっさり切り捨てた。 「女なんかに勃つか」 匠は汗で乱れた前髪をかき上げながら、それな、とクスクス笑った。 「それにミカオ、おまえの身体いいよ。顔も可愛いし、女よりずっといい」 「そりゃどーも」 その日のうちに、だいたいの事情は聞いた。 比呂と匠は好きあってるけど、お互いにタチを譲らないからセックスができない。でもやっぱりちんこがある以上は挿れたいし、相手のエロい顔が見たいから、妥協案として間に誰かを挟むことにしたらしい。 「なんでぇ?後ろ気持ちいいよ?2人とも上手だし。とりあえず1回試してみれば?」 「こいつに言ってくれ」 「この人に言ってよ」 同時にそう返してきた2人は、自分が譲るつもりはなくて。サンドイッチの具として気に入られたオレは、イケメンのタチ2人と連絡先を交換した。 比呂はあんまりしゃべらないけど、ガタイもアレもデカくて、すごく男らしい。 匠はちょっとチャラい印象なのに細マッチョで、絶妙なSっ気がある。 そして、2人ともすごく優しい。 こんな2人になら、金払ってでも抱かれたいってネコはいくらでもいるだろう。 オレってすごいラッキーだなって思ったんだ。 最初のうちは。 比呂と匠は、月一くらいのペースでオレを買うようになった。平日の夜、3人で待ち合わせてホテルで過ごす。 3回目くらいから、オレはちょっと怖くなった。 もしかしていつか、2人が豹変してあぶないプレイさせられるのかも、とか。ホテルに行ったら部屋に何人も男がいて、輪姦されるのかも、とか。 そんな心配は一個も、実現しなかった。 でも。 こんなラッキー続くわけないって思ったオレは、ある意味正しかったんだ。

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