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(前口上)
昔むかしのその昔――。
ごくごく普通の人間がある日を境にフッと消えていなくなる、なんてことが当たり前にあった時代もありまして。
これを昔の人は『神隠し』、または『天狗隠し』などと呼び、神仏や物の怪に攫われたのだと伝えられて来たのでございます。
では一体、攫われた人間はどこへ消えちまったんでしょう。
極楽浄土? それとも地獄?
はたまた昔話のような、思いもよらない夢の国?
それがもし、異世界転移だとしたら……。
江戸の棒手振りハチ公が、流れてたどり着いたのは、見たこともない不思議な世界。
右も左もわからぬ場所で、魔神の愛に支えられ、強く図太く生きていく。
天秤と、流れ流され、どこへやら。
江戸っ子の波乱に満ちた一生涯。
いざ物語の始まり、始まりぃー。
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