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第7話 悪魔の吹聴

 ミサキが妊娠した。    その噂はクラスだけではなく瞬く間に学年中に広がった。 「十五で妊娠? やばくない?」 「真面目ぶってたのクセにヤることヤってんだな」 「相手は誰なの? あの子彼氏いたっけ?」  ミサキの悪い噂を耳にしたくなくて、日向はうつむきながら自分の席まで向かう。  着席すると、すぐさまケンヤがやってきた。ミサキと付き合っていることを知っているのは、高校ではケンヤだけだった。 「少しいいか?」  朝のホームルームまで時間がある。日向はケンヤに連れられるがまま教室を出て、人目につかない校舎裏まで歩いた。 「……お前なのか?」 「……」 「黙っていたらわからないだろう? 俺はヒナを責めたいから聞いているんじゃない。ヒナが心配だから聞いているんだ」 「僕が?」  ケンヤの優しい声と真剣なまなざしに、堪えていた涙が溢れそうになった。 「僕が……僕も、わからない。でも、にいちゃんの目があるから、ちゃんと着けていたのに……でも」 「ヤったことは間違いないんだな」  日向は小さく頷く。 「俺以外にお前たちのことを知っているのは?」 「にいちゃんが……」 「またアイツかよ。それぞれの両親は?」 「ミサキちゃんのご両親は相手が誰なのかを知らない。ミサキちゃんが話さないから。僕の親は、聞くまでもないでしょ? 僕のことなんか気にしてもいないよ」 「じゃあヒナは誰から妊娠の話を聞いたんだ?」 「…………にいちゃん」 「は?」  日向は頭の中で認めなくなかった事実を口にする。 「ミサキちゃんを病院に連れて行ったのは僕のにいちゃんなんだ」

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