72 / 110

第46話+α

有名な観光地で行われた学会は、思いの外あっさりしたものだった ダメだ......なおに会いたい 『ゆっくりしてきて下さいね』 なんて言われたのだけれど...... やっぱり帰ろう今日の新幹線で コーヒー缶片手にそんな事を考える 「望月君!」 ふと、視線をあげると......前髪が短いストレート髪の女性がたっている 馴れ馴れしい呼び方......知り合いか? 「あぁ、どうも」 「も~忘れてるでしょ。原田よ原田明海」 忘れる以前に覚えた覚えがない 「ごめん。知らない」 ニコッと笑ってそう言うと一瞬瞳が傷ついた色をまとう 「そう......私ね。子供がいるのよ、8歳の。父親はね、あなたなの。可愛いくて頭もいい」 「......ごめん。言ってる意味がわからない」 写真あるの、と差し出されたものにはちょっとポッチャリした男の子 「何が目的?お金にでも困ってるの?」 「えっ......いや、望月君の子供!なんかあるでしょ?」 「いや、なにもない。それじゃ、失礼」 「まって!」 よびとめる声が聞こえたが、これ以上話すのが面倒でその場を離れた ......なおに会いたい 新幹線で予定より早く帰ってくると家は、真っ暗 寝室から聞こえてくる小さな音に吸い寄せられてドアを開けると 開いたままのクローゼットとベッドの盛り ふっ......ふぅ......ひっ 小さな塊は小刻みに動いているようにも見える 「なお?」 塊に声をかけた

ともだちにシェアしよう!