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第62話+α

「望月先生~」 患者さんの経過報告書に目を通していると新人の看護師の男性が近づいてきた 「ん?なにかあった?加瀬くん」 「いやっ......あの~」 言いにくそうに大きな身体を小さく折り曲げて小声で話しかけてくる 「プップライベートなこと、なんですが......」 「短めにね、なにかな?」 「先生って恋人がいらっしゃるんですか?」 多分、先輩の看護師さん達から聞いてこいと言われたんだろう 申し訳なさそうにしているところをみるとなんだか、不憫に思えてくる 彼には、悪いが噂を拡げるチャンスだと思った 「いますよ、婚約者がね。明後日、婚姻届を出す予定です」 「ホントですかっ!?」 いきなり声が大きくなって少し周りの注目をあつめる 近くにいた看護師長さんまで寄ってくる 「まぁ、望月先生ほんと~?私があと10歳若かったら立候補してたわ~」 「師長、ご結婚されてますよね?」 噂は、予想以上に早く浸透した 「な~、望月。お前結婚すんの?」 診察室から出てきたところで名波につかまった 「あぁ、もうお前まで拡がったんだね」 「そりゃあな、相手はなおちゃんだろ?」 「勿論、なお以外に誰がいるって?」 「いや。病院では、原田先生っていう噂があってな」 原田......あぁ、あの女医か 「違うよ。全くね」 「それが、彼女。否定も肯定もしないんだよ」 なぜだ 「皮膚科行ってみっか?」 「あぁ」 「原田先生~、望月先生とご結婚なさるんですか?」 「ご想像におまかせするわ」 なぜ、否定しない 「あ!名波先生に望月先生~。望月先生、結婚のお相手って......原田先生ですか?」 こちらに気づいた看護師の1人がかけよってきて聞いてくる 「いいえ、違いますよ。原田先生も否定していただけませんか?」 「えっ?原田先生と付き合ってるんじゃないんですか?」 「いいえ。彼女とは、同僚以上の関係はありませんよ。私には、以前から交際しているお相手がいますから」 説明すると彼女は、納得したのか仕事に戻っていった 誤解を解いて医局へ帰ろうと名波と踵を返したところを呼び止められる 「望月君!」 「原田先生。誤解を招くので、呼び方を改めていただけますか?変な噂が立っては、仕事に支障をきたします」 俯いていた彼女の表情は、判らないものの誤解は解けた この前の噂もチャラにした スッキリして仕事が捗りそうだ

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