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あとがき

お付き合いくださり有り難うございます。 「忘却」を書こうと思ったのは、記憶喪失ってBLの定番お題だなあ~取り組んでみようか。これがきっかけです。 ラブラブカップルの片方が記憶を無くして二人がバタバタする展開は書ける気がしない。 叶わぬ恋心を忘れられないならいっそうのこと自分のことを忘れてくれないだろうか…。その願いが叶い自分を忘れてしまった男と廊下ですれ違った時、新しい恋をしようと決意する。 そんなストーリーになるはずでした。 ところが、書いていくと違和感がある。スッキリしない。 正享のことだけを忘れる? 元配偶者のことは思い出した。そうであれば離婚という一大事よりも深い所に埋め込んだ記憶が必要ではないか? それがないとあまりに私に都合のいい筋にならないだろうか。 神様にお願いしたら叶って忘れ去られた→新しい恋に向かおう! 私が読む立場なら共感できるか? 正享との間に性的な関わりを持ってしまい、それを後悔とともに封じ込めた。これだと正享の長い片想いと辻褄が合わなくなる。じゃあ実は両思いだった?これも腑に落ちない。 どうしたものかと一文書いては消すの繰り返し。そこにぶわっと浮かんできたのが正享が会社のトイレで事に及び、それに遭遇した正嗣の姿でした。ここからは一気に展開。 正嗣本人が自分の状況がわからない状態のまま物語が展開したので、読者の方も正嗣と同じようにモヤモヤしたでしょう。なんなんだよ~はっきりしろよ~と苛々して読むのをやめてしまった方がいたでしょうね。 封じ込めた記憶が露呈したあとの二人の行動に関して「これは共感してもらえないだろう。」と思いました。 衝動、恋心、友情、劣情、未練といった制御しにくい人の心。意のままに動けなくなる、真逆に動いてしまう。互いが合致しないままのぶつかり合い。 かつての恋を振りほどき、新しい恋に手を伸ばす正享。 すべてを話したいと美佐緒に電話をする正嗣。 共に互いの存在を失って得る未来。 自分としては、最後まで辿り着けないと諦めそうになった物語を書ききれてよかったというのが正直な感想です。 ごめん、ありがとう、さようなら 正嗣のメールを受け止め返事をしない正享。 ともに消えるメモリー。 皆さんの心のどこかをざわつかせる事ができたなら、最初の構成から変わってしまいましたが、結果オーライかなと。 抵抗できないリビドー 身に覚えがあるので、程度の差こそあれ正嗣の気持ちが理解できます。という告白をもってこの物語を〆させていただきます。 読んでいただき、ありがとうございました。

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