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第1話

 口の端にざらりとした感触が引っかかった。 「ジェフ、きちんと髭は剃りなさいと、何度言えばわかるんです? せっかくの整った顔が台無しじゃありませんか」  唇を離し、銀灰の無精髭に覆われた弟の顎を思わず鷲掴んで、ヴァージルは顔をしかめた。  しかし今それをジェフリーに言ったところで、聞こえるわけもないことに気づく。  全身を朱に染めて、何度も痙攣する。手入れをすれば美しい銀灰の髪は乱れて寝台に散らばり、その頭上では繋がれた両手が空を掻いていた。頭の中はヴァージルが与える快楽に支配され、他の何も考えることなどできないだろう。  つい一瞬前。ジェフリーの無精髭に気をとられるまでは、ヴァージルも与える快楽だけを追っていた。それさえなければ繋がった下肢の熱に身を任せ、愛しい弟の身体を貪ることができたというのに。  ジェフリーはヴァージルがキスの際に障るから無精髭が嫌いだということを知っていながら、会いに来る時に髭を剃ってきた試しがない。 「っ、あ、ヴァ……ジルッ」  中に埋めたまま動きを止めたヴァージルに、もどかしいと言わんばかりにジェフリーは身をよじる。その様が無性に腹立たしかった。自業自得だと、ヴァージルは細い組紐で戒めた陰茎をきつく握り込んだ。 「ひっ、あああ!」  ガクガクとジェフリーが大きく身をのけぞらせる。瘦せぎすの体躯がぴんと足先まで張り詰め震える。銀の双眸を限界まで見開き、大の男がとめどなく涙を流す様は、やはり無精髭があっても美しく、たまらない。  枕元のランプの灯を大きくする。  壁にかけられた大きな鏡が見えるように、ジェフリーの顔を向ける。  鏡の中ではジェフリーの乳首に繋いだ細い鎖に光が反射し煌めいた。色鮮やかな組紐で彩られ、戒められた陰茎。そしてヴァージルと繋がった秘められるべき場所も、灯の下に煌々とさらけ出された。  銀灰のジェフリーと、漆黒のヴァージル。兄弟とはいえ対象的なのは、母が異なるからだ。汗でまとわりつく自分の欝陶しい長い髪を掻きやり、繋がった孔の際を撫で、ゆっくりと中をかき乱す。 「ふ、あぁ……」 「気持ち良さそうですね。ジェフ。とても可愛らしい」  押さえつけ、無理矢理押し開いた口の端をぐちぐちと玩びながら次第に激しく奥へと侵していく。 「あっ、アァッ、ヴァ、ジル、イく、イき、たい、ゔぁーじるぅうう!!」  追い詰められたジェフリーが絶叫する。組紐に戒められたそれは限界まで張り詰めていた。  律動と共にヴァージルの額から汗が飛ぶ。 「ええ、一緒に、イきましょう、――ッ」  ヴァージルは限界まで引き絞っていた組紐を手から解き笑った。  

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