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ノスタルジー
ツナ……高木命 は医者になることしか許されない医者一家の子やった。
だから私は、ツナを支える看護師になろうと決めたの。
私……糸藤依織 の父とツナの父が同期で家族ぐるみで仲良しやったから、私たちは兄弟くらい一緒にいて、よく遊んだのよ。
私の方が3つ年上やけど、女のようにおしとやかに育てられたせいで生意気なツナに負けっぱなし。
まぁ、でもそこが好きなのよね……うふふ。
私の初恋も好きなタイプも全部ツナ、どうしてくれるのかしら。
「あかん……帰れんかと思たわ」
日勤のあまりの仕事の多さに頭がやられて私の密かな想いが漏れ出した。
もちろん、思考伝播ではないと信じたいわ。
ただいま18時30分、終了時間を1時間30分過ぎているが、やっと更衣室に着いて着替えをしている私。
別に予定がないから、急ぐ理由はないけど……でも明日も仕事やから。
働き改革って世の中騒いでるくせに、相変わらず病院はブラックのままなのよ。
私は短く整った黒髪を撫でながらため息をついて、糸藤と書かれたロッカーを閉じた。
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