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ツナ
軽く医療従事者に挨拶をしながら歩き、裏口から出る。
2010年7月22日、暑いけど1枚着たい私は半袖で紫のパーカーを羽織って、フードを頭に被るの。
真っ暗で誰も顔を見るわけないのはわかっているんだけどね、隠したくなるのよ。
垂れた一重、歯を出して笑えば絶対見える八重歯……ほんまにイヤやわ。
今日の疲れと変わらない自分の顔の醜さにため息を吐くと、大きい温もりにすっぽり収まった。
びっくりしているうちに、右の耳たぶをねっとり舐められたのでビクッと身体を跳ねらせる私。
「あっ、ハァ……アッ!」
止むなく立ち止まると、ふふっと聞き慣れた愛おしい笑い声が聞こえて、誰だかわかった。
「相変わらず耳が弱いんだね、イオちゃん」
低い声で嘲けながら息を耳に吹きかけるツナ。
でも、胸の前にある手がゆっくり下がっていくのがわかったら、一気に意識がはっきりしてきた。
「色っぽいんだから、警戒してあるかないとこうなる……いたたたたっ!」
後ろに手を回して、頭を拳でぐりぐりすると、甘い声が叫び声に変わった。
「何してんねんこのボケ! 頭チューチュー吸うたるぞ!!」
呻きながらしゃがんでいる緑のパーカーの男に関西弁丸出しでキレる。
「病院からまだ1kmも来てへんのにそない喋り方しちゃあかんでしょうよ」
「その近さでセクハラするツナの神経こそ疑うわ、アホ」
スマホのライトを当てると、やめて〜と吠えて顔を手で隠すツナ。
黒いマッシュで釣り目の二重、高い鼻に薄い唇が細長い顔に収まる。
私が一番好きなのは色素が薄い瞳なのよ。
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