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第64話
愛偉兎(律)side
「そう…そんなことがあったんですね…亜咲斗…よかったね…君をこんなにも愛してくれる人に出会えて…亜咲斗…来世ではきっと…」
佐藤さんの後悔を…願いを…すべて聞き終えて一人呟いた…
「律さま。」
俯く俺に心地のいい優しい声で佐藤さんが呼び掛けた
「はい」
「これからも亜咲斗さんに会いに来てあげてください…私だけじゃもう飽きてしまってるかもしれないので」
「あははっ。亜咲斗ならそう言いそうだね。うん。また会いに来ます…」
その時風が俺たちの間を通り抜けた。
「亜咲斗…かな?」
「だといいですね」
花を手向け去っていく佐藤さんの後ろ姿を見送り俺もその場を後にした。
それから佐藤さんの思いを亜咲斗を知ってるみんなに伝えた。そしたら皆が毎日のように代わる代わる亜咲斗に会いにいってくれるようになった…
…亜咲斗…お前のしてきたことに無駄なことは1つもなかったよ。こんなにもみんなに愛されてる…先輩にも後輩にも先生方にも…
ねぇ…亜咲斗…君は……
「…亜咲斗は…皆に愛されてた…同情ではない別の大切な思いをみんな亜咲斗に持っていた…智輝とあの時別れさせられた奴等だけじゃない…お前を知る人たちは皆お前に会いに行ったんだよ…。亜咲斗の苦しみに気付けなかったことはみんな悔やんでた…でも…もう亜咲斗はいない…出来ることはお前のお墓に手を合わせに行くこと…それしかなかった…みっちーが目を覚ましたのはお前が刺して5年ほどたってからだったよ。幸い大きな障害も残らなかった…そのみっちーが退院して一番に向かったのはお前のとこだった。誰よりも熱心に手を合わせにいってた…年を取って体が思うように動かなくなってもずっとずっと…俺達の中で一番先にこの世を去ったのはみっちーで…亡くなる間際もお前のことを気にしてた…」
「みっちー…が…」
「うん…」
「俺は…みっちーに…何もしてないのに…」
「みっちーは皆に平等な人だったから…亜咲斗のことも大切な人に変わりなかったんだよ」
「そう…そっか…」
「お前は皆に愛されてたよ…ちゃんと…愛されてた…今度こそ…絶対…幸せになって…」
「うん…うんっ!!ありがと…」
しっかり龍吾と手を握り合ってるのを見て安堵する。
ねぇ…龍吾…俺の大切な弟を…亜咲斗を…頼んだぞ…
龍吾と視線を合わせると力強く頷いた
「もう結構時間たったな。そろそろ龍吾の家行くといい。後は二人で過ごしな」
「うん。じゃあ行くね。」
「うん。いってらっしゃい」
「いってきます」
並んで幸せそうに去っていく後ろ姿を定と見送った
「ねぇ。あいくん」
「ん?」
「龍くんがここへ来てくれて良かったね」
「そうだな。前世ごと愛してくれる相手だ…どんな困難も二人なら乗り越えられる…」
「そうだね…ちょっと寂しいけどね…。あさちゃんが人のものになるなんて…俺達の可愛いあさちゃんがぁ…」
「おい…定…キャラが由になってんぞ?似合わねぇ」
「あははっ!昔のこと沢山話したからかな?どうしよぉ!これからずっとこれだったら」
「知らね…更にモテすぎんじゃね?」
「あはぁ…暫くはいいかなぁ…今は二人を見守ってたいよ」
「深雪が現れたら?」
「ん~…速攻口説くね」
「定…お前が肉食とか…違和感たっぷりだな」
「深雪ちゃんは別っしょ!とはいえ…そんな簡単には出会わないけどね。そのうち一緒に生きていきたい人が見つかれば…そのときは…ね?あいくんもでしょ?」
「だな」
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