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「なんでてめぇはこんな寝相悪ぃんだよ!? オレの腹の上に頭のせやがって」
「え、あれ?」
オレはすぐさま手足を見てみる。フツーの、人間の、オレの、いつもの手足だった。
「奏ちゃん、オレ、耳付いてない!?」
咄嗟に頭の上に手を当てる。そこには何もなかった。尻を触ってみる。何もない。
「はあ? 何寝ぼけてんだ、耳なら付いてんじゃねえか」
「いたたたたっ」
奏ちゃんの手が伸びてきて、思いっきり耳たぶを引っ張られた。
「ゆ、夢……?」
「おい、どうしたんだよ? 打ちどころでも悪かったか?」
奏ちゃんがベッドの上から、床で途方に暮れるオレを見下ろしている。
「そっか、夢だったのか……」
オレは呟いて、人間に戻れて安心したような、残念なような、複雑な気持ちに、思わず両手のひらで顔を擦する。
「ん?」
カサリ、とほっぺたに何かが当たった。
「ああっ!」
「なんだ? うるせぇな」
奏ちゃんが苛立たしげな視線を寄越す。オレは奏ちゃんに向かって左の手のひらを差し出した。
「奏ちゃん、見て! これ、見て、見てっ!」
「それが、なんなんだよ」
オレは興奮のあまり、奏ちゃんの首元に抱き着きながら、話し始める。
「うわっ、」
「あのね、奏ちゃん、えっとね、オレがね、小さい犬になってね、それで奏ちゃんがお皿に…………」
オレの左手の薬指には青いリボンが結ばれていたんだ。
***「オレ、○○になっちゃった!?」終わり
これにて完結です。
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