57 / 438
57.
ぐったりと動かない俺を抱えたおにーさんが部屋風呂に連れてってくれて、綺麗にしてくれた。ちょっと意地悪もされたけど、おにーさんがいたずらに俺の乳首をつねってきても、まだ柔らかいらしいお尻の入り口をグリグリされても、ただドキドキと胸が高鳴るだけだった。
シャワーを済ませて、先に布団に転がる。何となく、お尻にまだ入ってるような違和感があるし、足を開きすぎて股関節がガクガクする。
「誠、どっか痛い?」
「乳首。あと首」
「それは別にいいから」
「お尻は痛くないよ」
「ならいい」
寝転がる俺の横に座って、くしゃっと髪を撫でてくれる。その手はやっぱり心地いい。目を閉じて眠ってしまいたくなるけど、堪えておにーさんを見る。
「おにーさん、ぎゅってして」
「ったく、寝る気だろ」
「眠いもん」
文句を言いつつ隣に寝転がってくれたおにーさんに抱きつく。ピロートークなんてものよりも、こうしてくっついてたい。しがみつく俺の背中をトントンと優しく叩くその行動に俺の意識はあっという間に沈んでいった。
朝はやっぱりおにーさんの方が早起きで、俺が起きるとおにーさんは座椅子に座っていた。何度か転がっておにーさんのそばに行き、その膝に顔を乗せて腰に抱きついた。
「おはよ」
「おはよぉ」
「あと30分くらいで朝飯来るぞ」
「んんっ、もおちょっと待って」
おにーさんはよしよしと頭を撫でながら、腰が痛くないかと聞いてくれる。昨日も痛いところがないかを聞かれたけど、人のことを噛んだり抓ったり引っ張ったりする癖に不思議だなあと思う。
痛いか聞くくらいなら痛いことしなきゃいいのに。
おにーさんに甘えているうちに時間は過ぎて、部屋の扉をノックされておにーさんから離れた。仲居さんが入ってきたとき、俺はおにーさんに浴衣を直してもらっていたから離れた意味はあんまり無かった気がする。どっちにしたって変な2人と思われたに違いない。
どうせ旅行先だしと気にせずに並べられる料理に目を向けると、朝から本当に豪華な和食だった。
「おにーさん、食べ終わってから時間ある?」
「チェックアウトまで2時間くらいあるな」
「露天風呂行って来ていい?」
「行きたいなら好きにすりゃいいけど、歯形残ってんぞ」
「え!?嘘!?」
「あとで鏡見てから考えろ」
「おにーさんのばかあっ!」
「うるさい、食事中くらい静かにしろ」
ぴしゃりと正論を言われると黙るしかないけど!そんなあ。たしかに昨日散々噛まれたけど、歯形残ってたの?俺、露天風呂も行きたかったのになあ。ブツブツと少し文句を言っていたら、これやるから機嫌直せと朝食のデザートを俺にくれた。こんなんじゃ釣られないぞ!と思ってたのについ受け取っていて、仕方なく文句を引っ込めることになった。
おにーさんがチェックアウトをしている間、受付にサービスで置かれていたジュースを飲んでいるとこれがまた美味しくて、おにーさんが戻ってくるまでに俺の荷物が増えていたことに苦笑いされた。言えば買ってやるのにと言われて、やっぱりなあと俺も苦笑いした。
「そんな美味かった?」
「うん!家帰ったら冷やすから飲んでね」
「あれ飲めば良くねえ?」
「俺買ったから!こっち飲んで!!」
おにーさんはふっと笑ってはいはいと言い、受付のジュースを飲むことなく玄関の方に歩きはじめたので俺も付いていった。
そのあとは言っていたように水族館に連れて行ってくれて、水族館が好きな俺はものすごく楽しんだ。アシカショーもペンギンショーも見て、観賞魚コーナーで楽しんで大きな水槽の前で見惚れた。
なんでこんなに水族館が好きなのかは分からないけど、海の中にいるんじゃないかって錯覚するくらい大きな水槽を前にするのはずっと昔から好きだった。
「おにーさん、ありがとぉ」
「そんなに好きなら今度はシーパラ行くか」
「いいの?ついでに江ノ島もね!」
「お前距離感わかってる?」
「どっちも横浜でしょ?」
「江ノ島は横浜じゃねえよ」
嘘だあ!とシリに聞いてみると江ノ島は本当に横浜じゃなかった。横浜観光とかって調べたら一緒に出てくるからてっきり横浜だと思ってたのに。さらにシリに距離を聞いてみると30キロほど離れていると教えてくれて、1日で回るのは諦めようと思った。
「今もそれ使うんだ?」
「こういうときは便利だよ。一人暮らしの時の1番の友達だもん」
「っ、っ、そうかよ」
「笑ってるの隠さなくてもばれてるよ」
ほんとのことだもん。おにーさんに飼われるまで、こっちに来てから俺の1番の友達だったからそう簡単に手放したりしない。おにーさんは悪い悪いと笑いながらくしゃっと髪を撫でてくれた。
優しくされて泣きそうになったけど、外だがらと堪えた。
ゆっくり出来て、だけどすごく楽しい旅行はあっという間に終わった。
ともだちにシェアしよう!