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64.
「ぐすっ、ゔぅ、ぅっ」
23にもなって、人の前でおしっこを漏らした。
何が何だかわかんなくて、でもとにかく恥ずかしくて情けなくて泣く俺。ついに捨てられるかも知れない。こんな粗相するやついらないって、ついに捨てられるかも知れない。
「ちょっと待っ「やっ、やだあ、おにーさん、行かないでっ」
おにーさんが立ち上がろうとして、俺はおにーさんの腕を掴む。お漏らしして、捨てられるかも知れないってことしか考えれなくておにーさんにしがみついたら大きなため息が降ってきて、さらに力を込めて行かないでと懇願した。
「タオル取ってくるだけだって」
「ぐすっ、やっ、俺も行く」
「お前がびしょびしょなんだよ」
「ふぇっ、ごめ、なさっ、やっ、捨てないでっ」
「はあ?」
「捨て、ないで。おにーさんっ」
ぎゅうぎゅう力の限り抱き付いてお願いを繰り返す。
おにーさんは立ち上がるのをやめてベッドに座り、抱きつく俺をぎゅっと抱きしめてくれた。俺はごめんなさいを繰り返して泣きついた。
「こうなるかもなって分かってたしいいよ」
「ぐずっ、な、んで?」
「まさか綿棒でこうなるとは思わなかったけどな」
分かってない俺におにーさんは尿道を刺激するとうっかりそのまま尿まで出すことがあると教えてくれた。奥まで刺激する方がそうなりやすいから、綿棒くらいじゃこうならないと思っていたと言うだけで責めてくる様子はなかった。あやすようなその声に少し安心して、抱きつく力を緩めた。
「捨てたり、しない?」
「しねえよ」
「おにーさん、大好き」
「はいはい」
安心してぎゅうぎゅう抱き付いて、やっと自分たちの惨状を認識する。自分のせいだけど薄いアンモニア臭にびちゃびちゃな体にベッド。悲惨だ。洗えばいい体はともかく、ベッドがおじゃんだ。
「おにーさん」
「ん?」
「明日、ベッド弁償する」
「はっ?」
「だって、おしっこ……」
「防水シーツ敷いてるから下は問題ねえよ」
漏らす可能性あるから敷いていたと教えてくれて、その時にエッチする前にベッドに転がって感じた違和感はそれだったのだと気づく。いつものシーツなんだけど、なんとなくガサガサというかなんというか。シーツの擦れる感じが違ったのは防水シーツのせいだった。
用意周到というか、なんというか。
おにーさんはタオルを取りに行くことを諦めて、この後洗うことになるシーツを引っ張って濡れていないところで雑に体を拭いていた。俺の体もそうして拭いてくれて、シャワー浴びるかと言ってお風呂場にも連れて行ってくれて、シャンプーまでしてくれた。
一緒に新しいシーツに取り替えて、いつもの感覚になったシーツに沈む。疲れたし恥ずかしかった。
「おにーさん」
「ん?」
「もぉ、尿道はやだ」
「それは俺が嫌。空イキしてんのも漏らしてんのも可愛かったけど?」
「ッ、うぅ」
おにーさんの可愛いの基準が分かんない。だけど言い返せなくなって黙る。そんな俺を見て笑ったおにーさんは、ちゅって触れるだけのキスをしてくれた。
「期待以上だよ」
「……捨てない?」
「捨てない。お前こそ家出すんなよ」
「ん、しない。おにーさん、大好き」
「はいはい」
よしよしと頭を撫でられているうちに、俺は眠っていた。
翌日、朝起きてトイレに行って悲鳴をあげた。
いくら慎重にしてくれたって、いくら潤滑剤を使ったってやっぱり入れる場所じゃない。沁みる痛みに耐えながらなんとか排泄をして、リビングに行きおにーさんに文句を言う。
「おしっこも痛いよっ!やっぱりおちんちんは出口専用にしよ?」
「お前が綿棒なんか選ぶからだろ。もう1個の方だと滑りいいから自重で沈むくらいだ」
「あああ!俺の体をなんだと思ってんの!」
「俺のもの。どこに何突っ込もうが俺のもんに何したっていいだろ」
「虐待だあ!」
「どこがだよ。可愛がってるだけだろ」
可愛がるの方向性を変えて!と朝から叫ぶ俺と、ニンマリ笑って可愛がってやるよと言うおにーさんが居た。
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