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「なんか誠が迷惑かけてたりしぃひん?」 「いえ、大丈夫です」 「ほんまに?お父さんどうしよう、誠にもったいないで」 父さんに話を振った母さん。そして父さんはその通りだと頷いてようやく口を開く。 「こんなんで良いのか?ほら、その、もっといい人も見つけられるだろう」 「誠と居ると楽です。不安定な自分を受け入れてもらったのは俺の方です」 そう答えるおにーさんをじっと見る父さんと母さんは何を考えているのかよく分からない。 「本当に誠で良いのか?」 「ちょっと!父さんまで!?」 「しゃあないやん。あんたにはもったいない人ばっかり連れてくるんやもん」 「ねえ俺息子!なんかひどくない!?」 「気のせい気のせい。それよりほんまにこんなんでいいん?」 「こんなん!?」 「うるさいなぁ。ちょっと黙っとき」 俺撃沈。 なにこれ、なんでこんなにも言われなきゃいけないんだろう。あれ、俺愛されてる、よなぁ? 「この子、ほんまに甘えん坊に育ってもうて……。嫌にならへん?大丈夫?」 「不思議なことにどれほど自分が忙しくても、家に帰って誠が転がってないとどうにも落ち着かないんで居なくなると困ります」 「夏目さん、えらい変わってんなあ。私やったらどつき回してるわ」 「それで父さんがいろいろするんだね」 「だからあんたは黙っときって言ってるやろ」 俺が生まれるよりもずっとずっと前、もしかしたら父さんは母さんにどつき回されてたのかも知れない。 こんな会話してる俺たち家族に隠れるようにおにーさんは笑ってる。これが家なら間違いなく声を出して笑ってる。 くっそおっ。 「誠もちょっとは自分のこと自分でしいや」 「はぁい」 それから俺は母さんに小言を言われて、へいへいと小さくなってそれを聞いた。 父さんはおにーさんに誠はちょっと怠け者だけど根は真面目だからとかなんとか言って俺のことを頼むとお願いしていたりした。 俺は家族からなかなかひどい評価を受けているけど、これも愛故だ、と思おう。 突っ込みまくった挨拶を終えて、薄暗くなって来た地元を歩く。始めてくるはずなのになぜか俺の少し前を歩いてるおにーさんに抱きつきたくなったけど、今は一応我慢する。 「穂高さん」 「なんだ」 「ありがとぉ」 「?」 「あの時俺のこと見捨てないでくれてありがと。大好き、すっごい大好き」 ああもぉむりっ。 抱きつきたい。 そんな気持ちでうずうずする俺を見て笑ったおにーさんがいいよと言ったのが聞こえてすぐ、俺はその体に飛びついた。 「大好き、ずっと俺のこと飼っててね」 「はいはい。分かってる」 「んんっ、もお大好きっ」 「はいはい。早く家帰ろうな。そしたらゆっくり甘やかしてやるから」 やんわりと俺の体を離して、俺の手を取って歩き出す。 その手をしっかりと握ってゆっくりと帰り道を歩き始めた。

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