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「おかえり!あといらっしゃい!どうぞ上がって上がって」 元気に迎えに来てくれたのはもちろん母さんだ。 だけど俺もおにーさんも驚いてちょっと固まっている。 「誠、お客さん外に立たしてどうすんの。はよ入り」 「あ、はい」 よく分からないまま家に上がり、母さんの後を付いてリビングに行く。そこには父さんが座っていて、俺とおにーさんが入ると立ち上がって挨拶しようとしたけど膝に乗せていたらしいリモコンやなんやを落としまくっていて緊張してるのが見て取れた。 「お父さんお茶煎れて。あ、コーヒーの方がいい?どっちやろ」 「俺カフェオレ」 「あんたには聞いてないねん」 「お茶でお願いします」 ちょっと母さん。俺の扱い雑じゃない?気のせい? まあそんなに気にしてなけど。 少しむくれる俺を放って、おにーさんはお茶に合うと思いますと言って買ってきたお土産を渡す。 「なにこれ、開けていい?」 「はい」 「うっわ、綺麗なお菓子やん!お父さんお皿持ってきて!」 そんな俺の家の様子におにーさんはいつもこうなの?と小さく聞いてくる。おにーさんの家じゃお母様が動いてたもんね、うちじゃ父さんが動くことの方が多い。 それでも父さんは何も言わずに用意をして、母さんの隣にスッと座った。 それから無言の時間が……少しあって。 「あんたなんか話ぃや」 「無茶振り!」 そう嘆く俺に届いたのは、おにーさんのすました声。 いやちょっと待って、なんかいつもと違って調子狂う! 「はじめまして。夏目穂高です」 「夏目、穂高さん」 「はい。来るのが遅くなって申し訳ありません」 うわぁぁぁ!むずむずする!気持ち悪っ! おにーさんが敬語!うわあっむりっ。 ブンブンと頭を振っているとあんた落ち着き!と母さんから怒られて必死に耐える。 おにーさんは簡単な自己紹介と仕事のこと、そして俺のことを話してくれた。そういえば俺は母さんや父さんにおにーさんとずっと一緒にいたいとは言ったけど、どうして出会ったかとか何にも言わなかった気がするなあと思いながら。 もちろん拾ったという言い方はしなかった。 仕事で追い詰められていた俺の身の回りの世話をしてるうちに……という飼っていた事実をおにーさんに都合のいいように言い換えていたけど俺は特に口を挟まなかった。 「いつもこんなじゃないのに、猫被り」 「誠うるさいで」 「だって」 「だってもなんもないわ。こういう時猫の1匹や2匹被って当然やろ」 「猫の皮厚すぎるぅ」 「それでもええんよ」 そんな母さんの言葉にポカンとするのは俺とおにーさん。父さんは分かってると言いたげな顔をして、俺に優しい顔を向けて笑った。 「普段誠が見てる夏目さんがどんな人かは知らん。けど誠がちゃんと笑ってることくらいは分かる」 「うん」 「誠ちゃあんと幸せなんやろ」 「うん」 「ならええよ。普段どんな風に過ごしてるんか知らんけど、誠が幸せなんやったらそれでいい」 そういう母さんに俺は涙が出そうになる。 もちろん俺が泣くわけにもいかないから堪えるけど、結構やばい。 俺ってほんと、母さんに愛されてる。

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