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開花〜僕だけの兄さんになる日〜

僕の義兄はΩだ。 義兄は孤児院育ちで父が引き取ったことで兄弟になったわけだが、普通ならαとΩが同じ屋根の下に住むなんて出来ない。Ωが放つフェロモンによって間違いが起こるからだ。 しかし、大神家に普通は通用しない。薬品会社で働く父は研究者で大神家の企業を支えている。権力があり財産が豊富であれば間違いが起こってもおかしくない。 周囲から見ると仲睦まじい家族、兄弟。ただ、義兄だけが家に抵抗しようとする。 「椿兄さん、今日も帰り遅いの?」 「桜。ああ、ちょっとな」 「分かった。気をつけてね」 「ごめんな」 兄・椿は孤児院から引き取られた頃からかなり変わった。引っ込み思案な男の子は、夜遊びに出かける男になってしまった。 「椿は相変わらず夜遊びか、桜」 「はい、父さん」 父が帰宅し話し相手になる。父にとって子供は実験道具で、それは父だけでなく大神一族全体だ。 「そろそろ誕生日だな」 父は僕の誕生日を祝うなんて気持ちはない。ただ、誕生日会での催しの進捗を聞いているだけだ。 「仕込みはまあまあかな」 「ふっ、信頼関係を壊したくないと手をこまねいていると間に合わんぞ」 「他の兄さんみたいに無理矢理なんてしない。僕には僕のやり方がある」 「16歳になればもう大人だ。大神家として恥じない芸を見せよ」 「もちろんだよ父さん」 16歳になれば大人と見なされる。今の世界、特に身分が高いほどパートナーを早く見つけなければならず、男子は16歳でお披露目会をする。桜は小学生の頃に父へお披露目会のためにと兄をねだった。嬉々としてカタログから選ぶ僕もしっかり大神一族の血をひいていたわけだ。 僕は父の部屋から出てすぐさま部下に連絡した。 「椿兄さんを実験室に運んでくれ」 実験室には既に発情し始めた椿兄さんがいた。汗をかき、暴れていた。揺れる度に固定している鎖と金具が鳴り響く。 僕はフェロモンを嗅がないよう防御マスクを付けている。部下は言いつけていた作業を終えたようだ。噛ませていた布を取ると荒々しい声で罵倒し始めた。 「おい、離せ!お前ら誰だ!くそっ、なんなんだよ」 学園で作成した薬を用意する。誕生日会で披露するパートナーは自分で改良しなければならない。 「貴方には選択する権利がある」 変成器で喋れば、まさか僕に捕らえられたなんて思わない筈だ。他の兄とは違って僕は慕い、純粋な弟を演じた。 唯一信頼できる弟に犯される椿兄さんの姿にゾクゾクした。αの桜には抵抗されても抑えつけられるフェロモンがある。Ωにとって我慢できるものじゃない。 「椿の中に指を入れてもいいかな」 「言いわけ、ねえだろ。それに椿って、呼ぶんじゃねえ」 「分かったよ椿兄さんって呼ぶよ。弟みたいに」 「ふざけんなっ、うっ」 足を開いたまま固定されている椿にとって後ろの穴にモノを入れられてたくなくても簡単に入れられてしまう。 「気持ち悪い、抜けよ」 「指が嫌だって言ったから機械を入れたんだよ。指がいいなら素直にならなくちゃ」 黒髪を振り乱し逃れようとするが、機械の振動には勝てないようだ。 「うっ、くっ」 「薬を投与したから発情状態で気持ちいい筈だよ。夜中寝てる時に少しずつほぐしてるから痛みも少ない。」 今日は機械を入れっぱなしにして快楽に慣れさせようと考えていたため強度を上げた。 「ほら、我慢しなよ。早漏れは恥ずかしいよ。」 リモコンを操作して両手首を縛っていた鎖を長くする。力が入らないのか四つん這いになっても暴れない。鎖を固定した後、椿兄さんの腰を掴み股へ擦り付けた。処女をもらうのは当日と決めていたが、椿兄さんにも僕とセックスすることを意識してもらわなければならない。 「こういうことするんだよ、分かる?」 「はぁ、はぁ」 「中に入れてほしい?」 椿兄さんは辛い筈なのに首を横に振る。鉄壁の精神だと鼻歌を歌いながら何度も擦り付ける。 「はぁ、はぁ、あっ、んんっ」 「気持ちいいよ、椿兄さん」 「へん、たいっ」 「椿兄さんも欲情して変態だね」 熱を出せば椿兄さんの内股はテラテラと光っている。粘っとした液に濡れた肢体はそそられた。 抵抗すれば気持ちよさを教える。選択させて、嫌なら別の案を出して実行する。好き嫌いがあるのはいけないと教えることも大事だ。 「次は口で奉仕をする方法を覚えようか」 椿兄さんの顔を上げさせると目隠しは濡れていた。心配しなくても僕が抱いているから怖がらなくていいという意味を込めてキスをした。 他の兄たちに襲われている椿兄さんを見たことは何度もある。家の中では父のお気に入りの使用人が何人もいるし、ストレス発散のため、実験のため兄弟親戚間で泥沼ドラマを再現した光景が繰り広げられていた。末っ子の僕も狙われたが、いつも庇ってくれたのが椿兄さんだった。 「桜は俺が守ってやるからな」 それが口癖で、そう言った矢先に他の男に食われていく。Ωのせいで性欲をコントロールできない椿兄さん。それでもαの兄たちの番にはならなかったし、大神家が作った薬で妊娠もしなかった。身体は奪われても心まで渡さない。 そして、椿兄さんが考えたことは僕と家を出て行くことだった。 夜遊びと言ってバイトをしていたことも把握済みだ。Ωが働ける場所なんて限られているから、変な男に捕まらないようこちらで手配した。会社の部下に頼めば朝飯前である。バイトに行く時は必ず鍵をかけるよう言われた。僕のために頑張る椿兄さんは美しい。 しかし、外を知れば人との出会いは増えるし、椿兄さんの魅力に気付く人もいる。 「いつまで経っても世話のかかる兄だなぁ」 七日間、食事も排泄も調教も僕がした。発情状態で満足にイけないなんて気が狂ってもおかしくないのに椿兄さんは僕の要求に応えていった。恥ずかしくて恥ずかしくて涙を流す姿も可愛い。 「さてと」 僕は部下と一緒に手術台に運ぼうとした。足の鎖を外すと蹴り上げようとする。予想通りだ。大柄な部下が押さえつけ、蹴られながらも手術台へ運んだ。 「じっとしていないと針がブスッと刺さっちゃうよ」 少し怯んだ。 暴れると急所を掴んでいたし、中に入れていたバイブも強くしたからその結果が出たのだろう。僕はにやけてしまう。 「少し痛いかもしれないけど我慢してね」 「なに、すんだ」 「刺青を入れようと思って。やっぱり僕のものになるからね」 「いや、嫌だ、そんなの入れたら」 「消えないって?いいと思うんだけど嫌?嫌なら別のことで我慢するよ」 椿兄さんの胸に触れる。円を描くようになぞっては捏ねるように遊ぶ。 「それだったら、ここにパートナーリングを付けようかな。セックスする時に毎回揺れるのもいいよね。痛いけど、椿兄さんは痛いのが好きだよね。」 どうする?と耳元で言うと、小さな声で刺青と答えた。 「聞こえないなあ」 「刺青に、しろ」 「して下さいの方が皆に見せる時はいいけど、椿兄さんらしいしいっか。じゃあ、お望み通り刺青入れていくね」 調教はひと段落した。三週間もかけて反抗心を無くしていったが、お披露目会までは気が抜けない。それに今まで他人にいやらしいことをされていたと思っていたわけだから僕と知ってどういう反応をするだろうか。 「椿兄さん、起きて」 眠っている椿兄さんの目隠しを外し起こした。 「兄さん、椿兄さん!」 「その声、桜?」 「そうだよ兄さん。無事で良かった!」 「どういうことだ?」 「父さんに恨みを持つ人に拉致されたんだよ。僕も兄さんも」 涙を浮かべると椿兄さんは僕を抱きしめ背中をさすってくれる。 「桜が無事でよかった。ほんとに、よかったよ。」 「でも僕、今変な気分で」 膨張した股間を見て兄さんは察したようだ。 「桜、何かされて」 「兄さん、助けてよ。今からショーが始まるって」 「薬を盛られたのか?」 「兄さん、ごめんね」 椿兄さんに口づけ、舌で錠剤を口内に押し込む。飲み込むしかない兄さんは驚いていた。 「ここに連れてきた人が兄さんを抱いたら解放してくれるって。薬を飲ませたら痛くない、気持ちよくなるって」 「桜は悪くない。桜、大丈夫だから」 「僕、どうしたらいい?」 「っ、それは。桜、いいか?俺のなかに、入れろ」 少し戸惑ったが真っ直ぐな目で僕を見て頷いた。 「でも、僕のこと」 「嫌いにならない。俺は桜のことが好きだ。大好きだから抱いてくれ」 一番聞きたい言葉だった。椿兄さんは聴衆がいる方を睨みつけ、タキシードを脱いで見せる。 「お前らの言う通りにしてやる。終わったらさっさと解放しろ、クソ野郎!!」 かっこいいよ兄さん。 椿兄さんは僕のものを擦って、僕のために身体を開き、僕を受け入れていく。顔を赤らめ、興奮している。 中は熱くて、すんなり迎え入れてくれた。腰を動かそうとするともっととせがんだ。 気持ちよすぎて欲望に歯止めがきかないのだろう。 「椿兄さん、好き」 「俺も、好きぃ」 「ありがとう。ほら、たくさんの人が僕たちの愛し合っている姿を見ているよ。もっと見せつけよう」 椿兄さんの鎖骨の下に彫った刺青を噛むと身体がはねる。椿と桜の刺青が愛おしい。頰にキスすると椿兄さんは微笑んだ。 心臓がバクバクする。 やっと僕の願いが叶った。兄さんが自ら僕のものになってくれた。 天使のような笑みに僕の熱が弾ける。

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