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第4話

 神谷が西田の舌を噛んだのだ。 「テント張ってんじゃねえよ。やけに硬い膝枕だと思ったぜ」 「……私を狂わせるあなたが悪い」 「いいや、俺は悪くない。お前が勝手に振り回されているだけだ。それで、どうする。俺が抜いてやろうか?」 「あなたを送り届けた後、自分で処理します」 「俺の家に来いって言っただろう。それとも、俺の前でイくのが嫌なのか?」 「嫌です」 「お前そういうとこあるよなあ。ま、いいけど。それじゃあゲームでもするか」 「は?」 「俺をイかせたらお前の勝ち。お前をイかせたら俺の勝ち」 「何言っているんですか。私はやりませんよ」  西田は強く出たが、神谷は自ら身体の向きを変え、西田の股間に顔を寄せた。 「ガッチガチじゃねえか」  神谷はわざとらしくスラックスの上から西田のものを舐めた。着衣の上からでも形がわかるほど大きく成長したそれが窮屈で、西田の強固な自制心すら揺らぎ始めた。 「イけよ」 「ここでは意地でも出しません」 「馬鹿な男だ。本当に、どうしようもなく――つまらん」 「聞き捨てならないですね」 「つまらん!」 「――っ」  突然神谷が上体を起こしたため、不覚にも西田の鼻頭に彼の頭が直撃した。西田は思わず身をのけぞり痛みをやり過ごしたが、起き上がったものの直後にバランスを崩した神谷の頭部が再度股間を刺激し、その衝撃で押し留めていたものが暴発した。 「……生温いんだけど」 「気のせいです」 「いいや。イったな。イっただろう。俺の勝ちだ」 「まったくあなたはどうしてこうも予測不可能なのですかね」 「こういう生き方してきたから、今の俺がいるんだよ。覚えておけ、西田。愚直な男は早死にするぞ。お前みたいに凝り固まった生き方の男のことだ」 「耳が痛いですね」 「これからも口が酸っぱくなるほど言ってやるからな。ところで西田。俺をこのままで帰しはしないよな?」  このまま――という言葉を受け、西田は現在神谷がどういう状況なのかを思い出した。自らが敬愛する組長が緊縛されたまま西田の膝で寝ているのである。縛れと命じたのは神谷だが、彼に縄を打ったのは他でもない、西田であった。 「まだ興奮してるのか?」  神谷の言葉に西田は無を通すことで否定したが肉体は簡単に裏切っていた。当然、神谷にも見透かされている。神谷はくくっと笑い、堀の深いまぶたを閉じて、言った。 「俺は寝る。お前は俺をベッドまで運べ。あとは好きにしていい――。」  品のないいびきが聞こえるまでの数十分、西田はできるだけ神谷の姿を視界に入れないように努めた。

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