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第13話

「何故だ! 何故、皆いなくなるんだ!!」 「春馬様、落ち着いてください!」 「煩い……うるさいっ!」 突然の出来事に理解が追いつかず、子どものように暴れ泣きわめく春馬を、川崎は強く抱きしめる。 「春馬様のお気持ち、お察しします。突然、両親が亡くなり、屋敷の者たちが貴方の元を離れ、別の屋敷で働きはじめたら、辛いですよね。……でも、安心してください。私は、貴方様を置いて死んだりしませんし、この屋敷から急にいなくなることはありません」 「ほんと……うか?」 「ええ。昔から片時も離れず、貴方の傍にいたのは、私ではありませんか。これからは、白崎の当主としての仕事もあるでしょう。そちらも私がしっかりと支えていきます。春馬様は私だけを信じて私と共に、この白崎の家で過ごせば大丈夫です」 「信じているからな……お前だけは、俺を裏切るな」 春馬は川崎の背中に腕を回すと、震えながらも抱きしめ返した。 (……くくっ。堕ちた、な) 今回の出来事を逆手に取り、春馬の精神面をどん底にまで落とし、そこに上手く入り込んだ川崎は、まずは2人だけの世界を作り上げることに成功した。 (あとはじっくり時間をかけて、私なしでは生きていけない状態に持っていけばいい。問題は……どうやって身体を繋げるか……か) 川崎の脳裏に浮かんだのは、この屋敷で泣きわめいていた冬愛が成長をし、中世的な見た目でどこか艶めかしくなった姿だった。 (……そうか。もう見たくもない顔だが、あのガキの名前と存在を利用すれば……上手くいくかもしれない) 自分の腕の中で弱々しく泣く春馬の髪に頬を摺り寄せながら川崎は、これから自身の手によって可愛らしく変化していくだろう春馬の姿を想像し高揚するのであった。

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