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運命の出会い

 その出会いは必然だった。  運命的だったと言い換えてもいい。 「きみが、炎国(えんこく)の代表かな?」  世界の重鎮が集う交流の場に、男はしっくり溶けこんでいた。  紺色の軍服に銀髪をまとめて流し、房飾りをつけている。ワイングラスを握る手指は細く、優美に長い。  均整のとれた体はほどよく鍛えられ、姿勢のよさはなにか武術を嗜んでいると窺える。  端正な色男だが、リウがとっさに目を奪われたのはその瞳だった。  玉虫色に輝いて見える――……緑、紅、黄金を帯びるふちは濃紺と、表情の機微にともない変化するうつくしい色だ。  優しげな顔立ちの男なのに、微笑みを浮かべてみせる相手がなぜか蛇のようにリウには見えていた。にっこりと、笑いかけられたそれだけで身が固まってしまい動けなくなったのだ……吐息を奪われ、文字通り呼吸も忘れて、リウはただ目の前に現れた麗人の姿を視界におさめていた。 ゆっくりと、相手の顔が笑みから困惑へ移りゆく。 「迷惑だったかな? 話し相手が欲しかっただけなんだけど……ごめんね」  そっと、気まずげに重たげなまつげが伏せられたとき、リウは慌てて首を振っていた。迷惑だなんてとんでもない。それどころか、いまにも去ってしまいそうな相手の片手をつかみ引き留めていたくらいだ。  この行動には男だけでなく、リウ自身が驚いていた。 (なにしてるんだ、俺……)  さっと引っ込めたこちらの手を、まじまじ男が見ている。 「きみは……ちょっと、失礼」  ワイングラスを置き、男はなぜかこちらへ身を寄せてくる。 「っ!」  近すぎる距離に間合いを取ろうとした腰をつかまれ、突っぱねようとした右腕を取られた。触れる体温が近くて熱い。若草に似た男の良い香りがして、頬に熱が集まった。 「……やっぱり。きみが、そうなのか」  男はこちらの首筋から耳のあたりをくんくん嗅いでいる。リウはぎょっとして固まっていた。不思議だったのは、なによりこの男にこうまで接近されて嫌ではなかったことだ。男のまとっているこの匂いのせいかもしれない。どこか懐かしく、胸を熱くさせる香りだ……嗅いでいるとまどろんでしまい、頬擦りしたくなるような匂いが。  うっとりと香りに気をとられている間、男はなにかを思案し決断したようだった。  勢いよく身を離すと、こちらの片手は掴んだままでじっとこちらを見つめてくる。 「きみ、名前は?」  リウは答えない。答えられるだけの声をもっていなかったのだ。黙って見つめるこちらの様子をどうとったか、男はホ―ルの外へと歩きだしていた。こちらの手をつかみ、引っ張るようにして――。 「行こう。きみに話がある」

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