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第1話
世の中は不公平だと思う。
なぜ、「できるやつ」と「できないやつ」がいるのか。
なぜ、「くる者」と「こない者」がいるのか。
『……調べによると、被害者のαの男性は犯人のΩと面識がありβだと聞いていたとのことです。これはバース性を偽って男性に近づいたということですよね?』
朝のニュースではつい先日起こった「Ωの男が知人のαの男の前で発情期 を起こし襲った」という事件について議論が交わされていた。
『そうですねぇ。バース性を偽るだなんて…酷いですよねぇ〜。ずっと相手のことを騙してたなんて』
『それにまず抑制剤があるんだから、きちんと管理をして欲しいものです』
『このΩは抑制剤を飲んでいなかったんでしょうか?』
『服用していても用法、用量を間違えるとあり得ると思います。』
アナウンサーの疑問に答えたのは、バース性専門の医者だった。
『バース性をβだと偽っていたとすると、おそらくこのΩの男性は抑制剤を過剰摂取したんだと思います。吐き気など副作用もあったはずです。長期間それを続けた結果、周期が乱れ突発的に発情期 が起こったと考えられます。』
『なんというか…迷惑な話ですね。』
何かの評論家が言ったため息混じりの言葉が、勝手に頭の中に刻まれていく。
「あのぅ…」と小さく声を発したのは、ゲストで出ていたタレントだった。
たしかβだっけ。
『このお二人って仲が良かったんですよね?正直に話そうとは思わなかったのかなあって…』
思わず箸を持つ手を止めた。
マジかこの女、って呆れたからだ。
『正直に話されてもねえ……Ωでしょう』
苦笑しながら呟くように言った評論家の反応は当然のものだ。
この世の中、Ωってだけで疎まれ蔑まされるんだから。
分かってるから黙っててくれよと思いながらテレビの電源を切る。
次に頭に浮かんだのは医者の話だった。
抑制剤の過剰摂取が原因で周期が乱れる、か。
気をつけないとな…。
結局残った朝飯をラップで包んで冷蔵庫にしまった。
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