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第7話
「どうして欲しい?」
「はぁ…?」
朝陽の台詞にびっくりして聞き返してしまう。
酷くしてって言ったのに、なんで聞くんだよ。
「おまえ、聞いてたか…?二度も言わせようとすんなよ」
「裕太がしてほしいこと言わないと、俺からは動かない」
「っ…ざけんな…な、でもいいから早くッ、しろよぉ」
こっちは内側から出てくる熱をどうにかしてほしいっていうのに、目の前にいるやつは全く動こうとしない。
ほんとに俺が言うまで動かないつもりか…?
一番酷いじゃねえか…。
「もう一回聞くよ。裕太は俺にどうして欲しい?」
朝陽の顔は見れない、見たくない。
目線を下げてる俺に声だけが降ってくる。
「……れの、さわっ…て」
聞き取れないくらいの声で言うと朝陽が、じゃあ仰向けになって、と言う。
それに従って身体を動かすと、そっと指でなぞられる。
脚から腰へ上がってくるたび、そこが痺れたみたいになって身体が勝手にびくつく。
「んッん…」
「裕太は、やさしく触られる方が好き?」
「ああ…う、」
「強めの方がいい?」
「…っ、聞くなッ!」
「裕太のいいようにしたいから、聞きたい」
見ないようにしていたけど、この時には思わず顔に視線を合わしてしまった。
コイツ最悪すぎだろ…!
そんなもん要らないのに…マジで最悪すぎる!
「も、強めでいいッ…から」
やけくそになって言うと、朝陽はため息をついて、俺は身体の熱は冷めないまま心臓が凍りついていくのを感じた。
呆れられた。
強めがいいだなんて、淫乱だと思われた。
本当は違うと言いたいけど、現時点でとんでもない醜態を晒してるんだから否定しようがない。
そんなことをぼうっとした頭で考えていると、思考が一気に吹っ飛ばされた。
「ひぃッ!や、ああっ…!」
強い電流を流されたみたいに強烈な感覚が襲ってくる。
朝陽は言われた通り、俺のを強く――激しく扱きだした。
最初から、何の躊躇もなしに。
前触れのような動きもなく、ただ与えられる快感に振り回される。
まるで、無理矢理荒れ狂う海に放り出された感じだ。
もがいてももがいても、溺れていってしまう。
怖くて涙が出た。
「俺」を攫っていくこの暴力的な波が怖い。
終わったら、もう朝陽とは会えない。
終わった後どんな目で見られるのか。
それで俺はどうなるのか。
先のことがとてつもなく怖くてたまらない。
「怖い?」
何も喋らなかった朝陽が、突然聞いてくる。
俺のを扱いていた手も添えられているだけで、動いていなかった。
「…?」
「泣いてる。本当は怖いんだろ」
「…ちが、」
「強くして欲しいなんて思ってない。本当は優しい方がいいと思ってる」
「いや…」
「裕太、俺は裕太が望んでいること全部やれるよ。言ったよね。裕太のためならなんだってできるんだよ、俺」
だめ…そんなこと言ったら、朝陽が、俺に縛られたままになってしまう。
「や…いや、朝陽は俺なんかのこと…」
「裕太は優しいね。今だって俺に迷惑がかかると思ってる。そんなこと有り得ないのに。俺はね、裕太が喜んでくれたりするのが一番嬉しいんだ。だから言って欲しいんだ、本当のこと」
朝陽の声が頭に染み込んで、ますます溶けていく気がした。
穏やかな響きを持った声なのに、毒みたいだ。
身体の中を巡っていって、閉じた本心を引き出そうとしてくる。
「裕太、言って。俺は裕太の傍からいなくならないし、裕太のことを迷惑だなんて思わない。俺が一番聞きたいのは、裕太の本当の気持ちなんだ」
ああ、
「裕太」
もう、耐えきれない。
「朝陽…やさしく、して」
朝陽がふっと口元を緩めて、よくできましたと言った、気がした。
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