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第1話
この世界には男と女というふたつの性別の他にα ・β ・Ω という三種類の二次性が存在している。
男女というふたつの性別でさえ色々と面倒くさい事が多い世の中なのに更に細かく細分化されたこの三種の性を一般的にはバース性と呼ぶ。
『BIRTH 』その意味は誕生、出産、血統、起源という感じなのだが、その字の通りバース性は出産や血統を現す性別だ。
αは優秀だが繁殖能力が低く、Ωは特別な力は持っていないが繁殖力が高いのが特徴でαはその優秀な血統を残す為にΩと結ばれる事が多い。
そしてそんな中で余ったβは何なのか? と言われたら、別に何もない。そう、何にも特筆すべきがない一般人、わき役、その他大勢のモブである。
αは生まれつき賢く優秀で、その性別が判明した瞬間からもう未来は開けている、そしてそんなαに愛される資格を持ったΩもまた、ただ無条件に愛される存在として幸せな未来が約束されている。
さて、俺が何故こんな事を長々と語っているのかと聞かれたら、俺にとってこのバース性という性別は切っても切り離せない関係にあるからだ。
因みに先に言っておく、俺の性別は男でβ、何の取柄もないモブの中のモブ! それが俺、榊原四季 の性別である。
「四季兄、何難しい顔してんの? 眉間に皺寄ってるよ?」
そう言って俺の眉間を突くのは榊原樹 、俺の弟だ。愛らしい笑顔でにこりと微笑む彼はバース性の中では愛される事を運命づけられたΩである。Ωは繁殖力が高い、そして男性体でも妊娠出産ができる特別な性別、それを持って生まれたのが目の前のこの弟、樹なのだ。
「四季、飯が不味くなる、その仏頂面やめろ」
そう言って椅子に座った俺の背後を通りすがりながら俺の髪を無造作に掻き回していったのは一番上の兄の一縷 だ、性別は男でα。
「四季~めでたい樹の入学式にその顔はないだろう?」
「そうだそうだ、可愛い弟の晴れの日にお前はなんでそんなにぶすくれてんだ?」
俺の目の前に並んで座る同じ顔、この二人も俺の兄で二番目の双葉 と三番目の三葉 。見ての通りの一卵性双生児で二人ともα。
ここまで紹介して分かってもらえただろうか? 俺の兄弟は5人、上から一縷、双葉、三葉、そして四男の俺、最後に弟の樹を添えて俺以外が全員バース性、因みに両親も勿論バース性で俺だけがこの家族の中でモブ中のモブとして存在している。
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