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第2話

煌びやかなバース性の人間に囲まれて育ったモブの中のモブである俺には少しばかり悩みがある。煌びやかで華のある家族の中で凡人過ぎて埋没するのはもう慣れたのでいいのだが、そんな俺だって高校3年生、恋のひとつやふたつはしてみたいお年頃だ。 だが! キング・オブ・モブである俺の恋には常に目の前に障壁が立ち塞がっている、それがこの華やか過ぎるほどに華やかな兄弟達だ。 長兄の一縷は俺より6歳も年上なので特に問題にはならないのだが、問題なのは2歳上の双子の兄、双葉と三葉、そして2歳下の弟の樹、この3人が俺の恋をしたいという気持ちの前に立ち塞がる障壁になっている。 双子の兄2人は幼い頃からモデルとして活躍するくらい華やかな容姿をしている、1人でもモテるのにそんな綺麗な顔立ちが2つも並んでいれば周りの視線は釘付けで、その横に俺が並ぼうものなら、こいつ何? マネージャー? 追っかけ? ってなもので、俺は誰の目にも映らないモブと化す。 けれど決して兄弟仲は悪くない俺達兄弟だ、もちろん双子の兄達も俺を構い倒す、結果何故か俺はアイドルのように麗しい双子に可愛がられる弟として周りから一線を引かれるというよく分からない立場に立たされるのだ。 兄は兄、俺は俺! なのに『あの2人の弟だなんて恐れ多くて……』という言葉と共にフラれる事数回、この兄2人が同じ学校に在籍している間、恋はできないのだと俺は諦めた。 そんな兄が高校を卒業した俺の高校2年生の一年間は俺にとっては平穏な毎日だった。華やかさはないが、平々凡々と過ごす日々の中で俺がついに恋人をゲットしたのはつい一ヵ月前、ひとつ年下の彼女はとても可愛かった、のだけれども…… 「ごめん四季君、私四季君の彼女でいられる自信なくなっちゃった」 そう言って彼女は俺をふった。意味が分からず俺が彼女を問い詰めると、どうやら彼女は春休みに俺と弟の樹が2人で買い物をしている場に遭遇したのだとそう言った。 「あんな可愛い妹さんと毎日比べられるなんて耐えられない……」 ってちょっと待って! 樹は妹じゃないないし! 俺は樹と君を比べたりしないよ! けれどどれだけ説得を試みても彼女は「やっぱり無理」と俺の前から去って行った。 確かに樹は可愛い、その辺の女の子より睫毛も長いし色も白いし美少女と言ったら誰もが信じる美少年だけど、でもこれ弟! ただの弟! 彼女と比べるとかあり得ないだろ!? 「四季、樹はΩで日常生活には危険が伴う、ちゃんと面倒を見てやるんだぞ?」 長兄の一縷兄ちゃんに改めて釘を刺される。そんな事は重々承知している、年頃のΩはダダ洩れる色気に惑わされる人間が続出する、例に漏れず樹もここしばらくで急に綺麗になって兄として俺だって心配だ。だから今日から俺の使命は樹の護衛、つまりは自分の恋愛なんて二の次三の次で、俺の青春終わったな……って思ってたところだよ。

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