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第25話(side一縷)
「あっ、兄ちゃ……もぅ、無理、壊れちゃ……あぁ!!」
腕の中で跳ねる肢体を押さえつけ、逃げる腰を掴んで叩きつける。零れる喘ぎは「無理だ」と告げるが、止めたら止めたで不満顔を見せる事を俺は知っているので遠慮はしない。
最初のうちこそ慎重に丁寧に扱って、辛そうな表情を見せればすぐに止めたし、痛いと言えばすぐに抜いたが、そんな俺の行動は何故か彼の気持ちを不安にさせるようでどう扱っていいのか正直戸惑う。
俺の名前は榊原一縷 5人兄弟の長男で24歳、腕の中に居るのは俺の実の弟、6歳年下の4男榊原四季 だ。
兄弟で何をやっているのかという突っ込みに関しては不要だ、そんな事は言われなくても分かっている。これは近親相姦、一般的には許されざる関係だという事も重々承知の上で俺は弟を抱いている。
「ダメっ、今……イった! まだ、そこ、だめぇぇ!」
俺は四季が可愛い。4人も弟がいるのに、何故か四季だけが産まれた時から俺の中では特別だった。
4歳年下の双子の弟達、この2人は可愛くない。4歳まで両親を独り占めに生きてきた俺にとってこの2人の怪獣は天敵でしかなかった。なりたくもないのに『お兄ちゃん』のレッテルを貼られ、したくもない我慢を強いられた幼い記憶。しかもこの2人、お互いがいればそれで満足な2人だけの世界を構築していて、俺はいつでも蚊帳の外。そんな2人が可愛いと思えるはずもなく、俺は鬱々とした幼少期を過ごしていた。
そんな中、次に生まれたのが4男の四季、双子の時には可愛いとは微塵も思えなかったのに、生まれたばかりの四季はびっくりするほどに可愛かった。
小さな手が俺の服の袖を掴み、にぱっと笑うその笑みに俺の心は打ちぬかれた。思えば四季は俺の初恋だったのだ。
四季の下に産まれた5男の樹も双子に比べれば格段に可愛かったのだが「にいたん」と俺の後ろを付いて歩く四季が俺にとっては特別だった。
そんな四季が俺から離れていったのは俺が中学に上がる歳、四季は小学一年生。その前から中学校受験のせいで塾だなんだと忙しくなっていた俺は四季と関わる時間が格段に減っていた。けれどその受験さえ終わってしまえば……と頑張っていたのに、俺達がそれぞれ進学し、気が付けば四季は俺なんかより学校の友達を優先して遊び回るようになっていた。
「今日はケンタのうちで遊んでくる~!」
元気に飛び出して行く四季はやはり可愛い、だけどケンタってどこのどいつだ!? 可愛い弟を誑かすなど言語道断! なんてな……この頃からだ、俺のこの気持ちがどうやら兄弟愛なんてものから逸脱しているのじゃないか? と俺は気付いてしまった。
そして気付いてしまったら今度は四季にどう接していいか分からなくなった。
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