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第29話(side一縷)

四季はなかなか一筋縄ではいかない。うぶなのかと思えば積極的だったり、嫌がっているのかと思えば喜んでいたり、嫉妬丸出しで感情的になれば「そういうのもっと見せて!」と嬉しそうに言われてしまう。存外四季は放任よりも束縛されたいタイプのようだ。 自分は優しく甘やかしたい方なのだが、うまく噛み合わないものだな。 何度も身体を重ね、最近では四季の良い所は大体把握が出来た。ついでに天邪鬼な四季の言葉は大体いつも意思とは裏腹だという事にも気が付いた。 「やめて」と「もっと」は同義語だし、わがままを言う時は酷くされたい時だ。非常に加減が難しいのだが、そんな事も分かってしまえばその言動のひとつひとつが可愛くて仕方がない。 「最近俺、めっちゃΩに間違われるようになった」 そう言って四季は今日も新たに俺が付けた項の噛み痕を撫でる。 「嫌だったら別の場所にするが?」 「そんな事言ってないだろ! 別にこれは良いんだよ、ただ……」 「今度一緒にチョーカー買いに行くか?」 四季の顔がぱっと上がり、その後はっとした表情で瞳を逸らす。 バース性の人間にとってチョーカーは大事な物だ。αとΩが番う為にはΩの項を噛む必要があるのだが、Ωは無暗にαに番にされてしまわないように自衛のためにチョーカーを付ける、もちろんただの防犯用として付ける者がほとんどなのだが…… 「そんなんしたら余計Ωに間違われる」 「勝手に勘違いさせておけばいい、そんな事よりどんなのがいい? 四季には原色より淡い色の方が似合いそうだ。石は光にあてたら七色に輝くようなのがいい」 「石……?」 「指輪とセットで売ってるんだぞ?」 「?」 一瞬期待をしたのだろうに、鈍いと言うか何と言うか、そんな所も可愛いのだけど。 「四季が卒業したら家を出るか、物件も探しに行かないとな」 「え? え……?」 バース性の人間にとってチョーカーは指輪と同じような物、αからΩにチョーカーを贈るのは言わばプロポーズと同じなんだがなぁ。 まぁ、気付かなくても問答無用、俺はもうお前を手放す気はないからな。

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