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第1話
αはΩを選びΩはαを選ぶ 。
それがこの世界の仕組みだしそこに疑問なんて持っていない。
その仕組みの枠から外れた俺は今日も枠の外で血に縛られない自由を謳歌する。
はずだった。
なんでこんなことに…どこから間違っていた……。
「それは君がβとして生まれた時からかな。君がΩだったのならまた違う未来もあったのかもしれないけど。」
でも……。
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人類には男女性と別にα、Ω、βという3種類の第2の性がある。
ヒエラルキーの頂点、つまり勝ち組のαと、発情期のため社会的立場は弱くなりがちだが男性でありながら妊娠が可能な無二の存在として重宝されるΩ。
そしてそのどちらでも無い、血にすらも平凡と決められてしまっているが何物にも縛られない存在β。
人口割合としてはβ、α、Ωの順に多く、Ωはαの子を身篭れる可能性が非常に高いため現在では学生時代からαとΩの出会いの場を広く設けようとする学校も多い。
進学校などでは人口の2割にも満たないはずのΩが将来有望なαとの出会いを求めて多く入学してくる。
俺の通う学園もその1つ。全寮制の進学校で生徒の4割がα、そして3割がΩだ。
αとΩはこの世界の『特別』で、彼らは『番』というシステムを持つ。αがΩの項を噛むと、以降噛まれたΩは噛んだαにしか発情しなくなり、噛んだαは噛まれたΩのフェロモンしか感じ取れなくなるのだとか。
そんな魂を縛り付ける、血で作られた運命。
だがβにはそういった特性は無く、例えβがΩの項を噛んだり、αがβの項を噛んだとしても変化は無いためαやΩとしてはβと結ばれるメリットが特に無い。
そのためβがαやΩに恋愛対象として選ばれることも、逆に彼らを選ぶこともほとんど無い。
そして俺もβ。
Ωの出す発情フェロモンなどに多少なりあてられるが理性が飛んでしまうことなんて無い極々平凡な人種だ。
αとΩが結ばれるのが世界の摂理。言わばβなんて添え物だ。
でも俺はその添え物らしい平凡な人生を楽しんでいたし、きっと将来はβのお嫁さんと幸せな家庭を作ってどこにでもある平凡な幸せを得るのだと思っていた。
それなのに───…
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