72 / 72
第72話 共に‥‥
安曇が康太を連れて来た…料亭の前でバスが停まった
バスが停まり扉が開くと、女将がお迎えに出向いた
康太の姿を見ると…女将は深々と頭を下げた
「女将、お世話になりますよ」
清四郎が言うと、女将は微笑み
「榊原様、何時も有り難う御座います。
お部屋も御料理も御用意してあります」
女将は皆を案内すべく店内に招き入れる
清四郎は「行きましょうか…」と言うと全員が後について行った
一番立派な部屋の襖を開けると
座卓が用意してあり、清四郎は康太の肩に優しく腕回すと…上座へと促し座らせた
その横に榊原を座らせ、一生達を座らせた
その反対側に飛鳥井の家族を座らせ
清四郎は、後ろの方へ座ろうとした
一生は「清四郎さん、ダメです!俺等は家族ではない…此処へどうぞ!」と席を譲ろうと…腰を上げた
「一生、君達は家族です!康太から切り離せぬ存在は…家族も同然!
そこに座ってらっしゃい!お酒が入れば…席なんて、入り乱れてしまいます…
気にしなくて良いですよ…」
清四郎は、一生を押し留め、女将に乾杯の準備をさせた
康太は出される料理に舌鼓を打ち、黙々と食べていた
腹が膨れれば…眠くなる
飛鳥井の家族や、榊原の家族は…入り乱れて
酒を酌み交わしていた
久し振りの時間に…家族は…酒を酌み交わし
与えられた時間を楽しむかのように…話に花を咲かせた
食事を終えた康太は、榊原の膝の上に頭を置き…甘えた
榊原を見上げて笑う
康太は…誘うような瞳を…榊原に向けた
赤い唇が…半開きに開かれ…舌がチロチロ見え隠れしていた
ペロッと唇を濡らす…その仕草も…
妖艶で…榊原は理性を総動員して…堪えていた
「伊織…」
情事の延長線上にある…濡れた声が榊原を誘う
榊原は…康太の頭を撫でた
その手に擦り寄る様に…康太は…口にした
「伊織…今夜は離さないで…
明日…何があろうとも…悔いなど残さない様に…オレを抱き締めてて…」
榊原は康太を抱き上げ…膝の上に乗せて抱き締めた
「康太…」
康太は…榊原の胸に…顔を埋め
背中に…縋り着いた…
愛し合う恋人同士の姿があった
明日……この命を落とそうとも…
悔いなど残さない…
強く抱き締めて…
息が止まる程…強く抱き締めて…
この身が滅びようとも忘れない様にして…
身も…心も…
伊織を刻み…
忘れない…
人として終えても…
愛してる…
愛してる…
絶対に離れたくない…
伊織…
お前で…オレを満たしてくれ
愛してる…
だから…共に逝こう…
伊織…共に…
康太は…指の先が白くなる程…
榊原の背中を掻き抱いた
康太…愛してる…
榊原の想いも…
同じだった
愛する君を脳に刻み…
共に逝きます…
康太…
榊原の指も…白くなる程…
康太を掻き抱いていた
一生は…抱き合う恋人同士を見て…助け船を出した
「清四郎さん…部屋を用意して下さい…
伊織の理性のあるうちに…お願いします」
一生の言葉に…清四郎は慌てた
「この料亭の横のホテルに部屋を取りましょう…
全員で泊まりましょう…
女将…部屋をお願いできますか?
全部で5部屋…お願い出来ますか?」
清四郎が頼むと、女将は「5部屋で宜しいのですか?」と問い質した
「清隆と玲香と隼人をお願います
瑛太と笙 と慎一、 康太と伊織
私と真矢と一生、聡一郎と悠太の部屋割りで良いですか?」
清四郎が言うと聡一郎は
「清四郎さん…僕達は一部屋で構いません
雑魚寝で構わないので気を使わなくても結構です」
離れ離れで過ごす方が辛いから‥‥と聡一郎は言葉にした
「それも、そうですね」清四郎は問う
聡一郎は、微笑み頷いた
「浮かれている暇など我等にはない…
明日は…周防の所へ出向く…
動けぬ供など要らぬ…僕は…康太と共に在るのですから…」
聡一郎の瞳は覚悟を決めていた
明日は…この命を懸けて…康太と共に逝くと…告げる
共に逝く………
だからこそ…康太は…榊原を求める
聡一郎は共に逝くから…動ける状態でいようとする…
清四郎は女将に
「女将…個室を1つと、和室で二間繋げて皆で雑魚寝します
その様に部屋の予約をお願いします!」
と、頼み込んだ
慎一は背筋を正し…主を見詰めていた
一生も聡一郎も隼人も…康太と共に逝くと覚悟は、とうに出来ていた
そう…この命…康太の為に捨て去る、覚悟など…とうに出来ている
飛鳥井康太と共に逝けるのであれば…
本望…
共に在ろう…
共に逝こう…
君のいない場所では生きられない…
君へと続く場所を…歩き続けていきたい
康太……お前と共に…
一生は瞳を瞑った…
聡一郎は一生の背中に顔を埋めた
隼人は…瑛太の胸で泣いていた
慎一は…康太を誇らしげに見詰め…笑った
貴方と共に逝けるなら…あの世も楽しい
置いて逝かないで下さい…
康太…
食事を終え…料亭の側のホテルに向かう
清四郎はフロントに出向き、予約入れた者だと告げると署名をしてKeyを受け取って戻ってきた
Keyを榊原に渡す
「父さん…」
榊原は、それを受け取り父親を見た
「康太と…時間が許す限り…」
清四郎は…Keyを握らせた息子の手を握りしめた
そして…背中を押す…
早く行けと…背中を押してやると…
榊原は深々と頭を下げて…康太の肩を抱き
ベルボーイに部屋を案内され…進んだ
二人を…清四郎は見送った
真矢も…笙も…
飛鳥井の家族や…一生達も…
何も言わず…見送った
部屋へ行こうとした時
「康太…!」と声がかかった
振り向くと…そこには…
戸浪海里が…秘書の田代と共にいた
康太は…ふっ…と笑うと…何もなかったかの様に……背を向けた
榊原が頭を下げて…康太の背を抱き…
部屋へと歩いて行く…
邪魔をするな…
と、ばかりに…その背を追うことは…
叶わなかった…
戸浪は…康太と榊原を見送ると…
同じ様に…康太と榊原を見送っている…
榊原の家族と…飛鳥井の家族… 一生達を見た
戸浪は…頭を下げて…
「何かあるのですか?」
と、飛鳥井瑛太に尋ねた
瑛太は戸浪に
「お時間はありますか?」と尋ねた
「ええ…あります…」
「でしたら、部屋に行きませんか?
そこで、一生か慎一に…聞くと良い
私達は…今は一緒に生活しておりません…
ですから…何が起こっているか…話せる程詳しくはないのです…」
戸浪は頷くと…
「では…ご一緒させてもらいます…」と答えた
清四郎はKeyを手にすると…
「では行きますか…」と声を掛けた
皆…清四郎について…部屋と歩いていった
榊原はKeyを使ってドアを開けると…部屋へと入った…
カードキーを差し込み、真っ暗な部屋に明かりを灯した
康太は榊原に抱き着いた
「伊織…伊織…」
康太が榊原の背中を掻き抱く…
榊原も康太を抱き締め…息も着かない…接吻を交わした
屈み込んで…康太の唇に…吸い付くような接吻をする
激しい接吻に…膝がガクガク…と震えた
力が抜けて行く感覚に…康太は榊原に縋り着いた
「伊織…あっ…」
榊原の手を…スルッと抜けて…康太の体躯が…力を失い…床へと崩れ落ちた
康太は…トロンとした瞳を榊原に向けた
床に…しどけなく座る姿は…誰よりも愛しい…榊原の宝物だった
康太が手を伸ばすと
榊原が康太を抱き上げ…ベッドへと運んだ
康太が榊原の肩に顔を埋め…擦り擦りする
「康太…」
榊原が呼ぶと…康太は…顔を上げた
欲情した康太の瞳の中に…榊原が映っていた
「愛してます…奥さん…」
榊原が言うと…康太は榊原の首に腕を回した
「伊織…オレも愛してる…お前しか愛せない」
引き寄せられるように…唇が重なり…
貪り…顔を上げると…ベッドへ進んだ
ベッドに康太を下ろすと…
「康太…服脱いで…脱がせる時間も惜しいから…」
だから…自分で脱いでくれと…榊原が訴える
康太は体を起こし…服を脱ぎ始めた
榊原は服を脱ぐのも焦れったく…服を脱ぎ捨てソファーの上へ投げ掛けた
康太の服も手に取ると…ソファーの背凭れに服をかけて
下着も脱ぎ取ると…康太の上に重なった
ギシッ…と、ベッドが鳴ると…榊原が康太に重なった
熱い肌が…康太に重なると…康太は瞳を閉じた
貪る接吻に…舌を絡め…応える
感じる体躯が…焦れったくて腰が動く…
榊原の指が康太の体躯を…這って行く
尖った乳首に触れると…康太の体躯がビクッと跳ねた
榊原の唇が…康太の唇から離れると…手を追う様に唇が這って行く
舌が…康太の乳首を舐め…唇が…チュッ…と吸う…
「ぁはん…あぁん…ダメぇ…イッちゃう…」
康太は限界だった…
イキたくて…亀頭の…お口から…愛液が溢れていた
「ねっ…ね…伊織…舐めたい…」
一方的な…愛撫は…嫌だ
与えて貰うのを待つしか出来ないのは嫌だ
愛してるから…愛したい
互いの体躯を高めて…感じさせたい…
康太は体躯を起こすと…舌を出して…
榊原の股間を目指した…
熱く滾る…嵩を増した肉棒が震えていた
康太はその肉棒に触れると…舌舐めずりをした
その淫靡な顔に…榊原は脳まで侵食される快感に堪えた
獲物を狙った…豹の様に…康太がゆっくりとした動作で榊原の股間に近寄る
康太は榊原の肉棒に触れると…亀頭の先っぽにキスを落とした
そして榊原を上目遣いで見上げる
視線が…釘付けになり…離せなくなる
康太はそんな榊原を瞳で確かめて…舌を出して…舐め始めた
ペロペロと先っぽを舐め…
カリの部分を…舌でなぞるように舌を這わせた
指は…榊原の肉棒に搦まり…弄ぶ…
スルッと…滑り落ちる指が…陰嚢を弄る
愛する男を食べ尽くす…姿がそこに在った
榊原は康太を抱き上げると膝の上に乗せた
「康太…一緒に一度イキましょう…」
榊原の肉棒と康太の肉棒を合わせて…擦り始めた
榊原の大きな指が…康太のと自分のを2本合わせて擦り上げる…
康太は…仰け反り…榊原の手の中で…
白濁を飛ばした…
「あぁっ…イクぅ…伊織!」
康太が…榊原の手を濡らすのと同時に
榊原も…射精した
康太の精子と…榊原の精子が…交わり合い…
1つに搦み合う…
「康太…君の中へ…挿れさせて…」
榊原の肉棒は…熱く滾って…力を衰えてなかった
康太は榊原の唇にキスして
「挿れて…伊織…
伊織の熱いので…掻き回して…
ねっ…1つに繋がろ…」
と、熱く榊原を求めた
濡れた手を…康太の秘孔に伸ばすと…
穴の中へ指を潜らせた
中は…待ち焦がれて扇動していた…
榊原の指に搦み着く…康太の腸壁を掻き分け…
康太のイイ部分を擦る…
すると…康太の体躯は…快感で震えた
「ねっ…もぉ…もぉ…伊織…」
康太が…榊原を求める
「なら、言って…」
榊原は康太の首筋を舐めあげ…催促した
「挿れて…伊織ぃ…お前の太いのが欲しい…」
康太の求めに…榊原は満足する
「良く出来ました…挿れます…」
榊原が康太の腰を浮かす
康太のお尻を左右に押しやり…穴を狙う
期待して待ち続ける康太の穴の襞に…熱く滾る榊原の肉棒が触れる
康太は…力を抜き…挿入の手助けをする
亀頭の先が…康太の穴の中に入ると…
康太の穴は咀嚼を始める
飲み込んで行く康太の穴は蠢きます…飲み込んで行く
根本まで納めると…榊原は康太を抱き締めた
「辛いですか?」
康太の体躯に…結合の負担は大きい
それでも欲するから我慢出来る…行為だった
「大丈夫…ねっ…伊織…動いてぇ…」
康太がねだる
榊原の太いので掻き回して欲しがった
榊原のエラの張り出したカリで引っ掻いて貰いたい…
そんな想いだけしか残らない
結合の辛さも…そんな思いがあれば乗り越えられる…
榊原は抽挿を始めた
快感が…脳天を突き抜けて行く…
康太は…仰け反った
酸素を貪る様に…顎を突き上げると…
榊原がその顎を…舐めた
榊原の体躯からは…体臭と汗に交じったフレグランスがして…康太は顔を埋めた
榊原の体臭と汗に交じった…この香りが好きだ
康太のフレグランスと、合わさると…別の薫りに生まれ変わる
二人にしか織り出せない…薫り
「あっ…あぁっ…んっ…イクぅ…」
この薫りを嗅げば…イッてしまえるよ…伊織
オレは…お前の薫りだけでイケる
お前を愛してるから…
「伊織…オレを離すな…」
康太の言葉を受け…榊原は康太を強く抱き締め…もう挿らないギリギリまで挿れた
「離す筈などないでしょ!」
康太の肩を噛み…榊原は言葉にする
「康太…っ…!」
榊原は康太を抱き締め…康太の奥深くに…精子を飛ばして…康太の腸壁を濡らした
「伊織…伊織ぃ…!」
康太も榊原に縋り着き…榊原の腹を白濁で濡らした…
終われない…
まだまだ…
終わらない…
康太…
愛してます…
伊織ぃ愛してる!
二人の想いは刹那の時を刻む…
熱が冷めるまで…
何度も何度も…互いを求め合った
夜が明けるのを…康太は榊原の胸の上で迎えた
榊原は康太を胸の上に乗せ…夜明けを見ていた…
「夜が明けるな…」
康太の言葉に…
榊原は瞳を閉じた
行かねばならぬ…時が…来たと告げる
行かせたくはない……
だが…行かねばならぬ…現実がある
「僕は…君と…共に在る」
康太も…瞳を閉じた
「伊織…未来永劫…共に在る…そうだろ?」
榊原は康太を抱き締めた
「そうです!君と…共に…
何があっても…僕は…君と共に逝きます…」
「離さねぇよ…死んでもな…!」
死んだって…離さない
愛する男を…離さない
伊織
伊織
伊織…オレはお前を離さねぇ!
想いは…同じだった
幾度…生まれ変わろうとも…互いしか愛せないのだから…
「康太……死んでも君を離しません
僕のモノです…君は僕だけのモノです!」
腕の中に愛する宝を抱く…
周防の用意する席に行く…
それが意味指す事を考えれば…
無傷で済むとは…
だから…互いを求め合った…
だけど…足らないよ?康太…
君を…愛して離したくなんかない…
康太は榊原の上から降りると窓の外を見た
朝陽が…上って…辺りを赤く染めていた
康太は榊原に笑って手を差し出した
「行くぜ!伊織…」
榊原はその手を取り…掌に接吻を落とした
「ええ…何処までも…」
立ち上がり…康太を抱き上げると…
浴室へと向かった
康太と榊原が部屋に消えた後
戸浪海里は瑛太の言葉を受け、皆と共に部屋に向かった
清四郎は布団を2つ増やして貰うように頼み
雑魚寝の準備をして貰う
戸浪は一生の前に立つと、深々と頭を下げた
「何があったんですか…
最近…食事に誘っても…今は手が離せない…
お宅へ伺おうにも…来るな…命を狙われたいのか…と牽制され…
今夜も…声すら掛けて貰えず…」
戸浪はショックを隠せない風だった
一生は…静かに戸浪の話を聞いていた
慎一は…一生を抱き締め…肩に顔を埋めていた
一生の指が慎一の髪を撫でた…
「康太は…明日…命を賭しても良いように…
刹那の時を…刻む為に旦那と共の時間を欲した…
邪魔されたくなかったから…康太は…貴方に背を向けた…
明日…嫌…もう今日か…命を懸けて…康太は行くから…それを選んだ…」
一生の頬を…綺麗な滴が流れて落ちる…
慎一は一生の肩から顔を上げ…一生を抱き締めた
この兄弟は…こうして互いを支えて…
康太と共に逝く道を歩んでいるのだ…
慎一は胸を張り…
「飛鳥井は乱世の突入した…
回避はしない…我が主は…逃げ道は用意はせぬ!」
前置きをして…深呼吸して…戸浪を見据えた
「周防切嗣の懐刀と謂うう男が…康太を訪ねて来た…
康太は…その男に席を用意しろと言った…
康太は…その命を懸けて…周防との闘いを終わらせるつもりだ…
その前に…家族と過ごし…伊織と共の時間を送る…
明日…命を落とそうとも…悔いなど残さぬ様に…康太は…逝くのです…
ですから、主の…無礼はお許しください…」
慎一は…戸浪に向かい…深々と頭を下げた
慎一に倣い、一生も、聡一郎も、隼人も…
戸浪へ深々と頭を下げた
共に逝く…仲間がそこにいた
戸浪は…瞳を瞑り…涙を流した
そして、その瞳を開いて…慎一を見た
「ならば…我も逝こう…
康太には…返しても返しきれぬ恩がある
康太のいない場所になど…用はない…
私も…明日は連れていって下さい」
戸浪の瞳も…覚悟を決めていた
「逝きますか?共に…」
一生が…問い掛ける
「ええ…共に在る…それこそが私の望みだ」
慎一が、問い掛ける
「その命…飛鳥井康太と共に逝きますか?」
「共に逝ける事こそ…本望だと言いましょう!」
一生は…瞳を閉じた
慎一も…その瞳を閉じた
飛鳥井康太と共に…
それこそが…本望だと…言われたら…
止める術もない…
聡一郎は一生の横に立った
隼人は慎一の横に立った
4人は戸浪海里に向き直り…
深々と頭を下げた
そして姿勢を正すと…
「共に逝きましょう…!」と一生が言った
「我等は…飛鳥井康太と共に在る!」と聡一郎が宣言する
「修羅の道を…我等は…共に逝く!」と隼人は戸浪を見詰めた
「ならば…戸浪海里さん、その命…我が主と共に…逝きましょう!」と、手を差し出した
慎一が手を出すと、一生も聡一郎も隼人も…戸浪へ手を差し出した
戸浪はその手を取り…固く握りしめた
「共に…この命…尽きようとも共に在らんことを…!」
戸浪はそう言い…指先が白くなるまで…
手を握りしめた…
瑛太はその姿を…黙ってみていた
清隆と玲香は…瞳を閉じ…祈った
清四郎と真矢、笙は…瞬きする暇も惜しんで…
共に逝こうとする…盟友を…見詰めて泣いていた
その夜…言葉もなく…布団に入り…眠る事にした
電気の切れた…暗闇に…啜り泣く声が…何時までも響き渡った…
榊原は康太をバスルームに連れて行くと
中も外も綺麗に洗ってた
自分の体躯も清めるかの如く磨き…
バスタブに康太と共に入った
「新しいスーツは持って来ました
それに着替えて…飛鳥井へ帰りますか?」
「嫌…下へ降りて行けば…秋月が待ってるだろ?
ついでに若旦那も…どう言う訳か…一生達と一緒にいる」
康太の言葉に…榊原は……部屋に行く前に
見掛けたな…と思い出した
「若旦那も…共に逝くのですか?」
榊原の問い掛けに…康太は…笑っただけで答えなかった
バスルームから出ると榊原は康太の支度をした
純白の下着に身を包む姿は…死装束を想像させる…
シワの1つもない下着を康太に着せ、純白のスーツを着せて行く
支度が終わると…榊原は自分の着替えをした
榊原もシワ1つない下着を身に付け
漆黒のスーツに身を包んだ
総て整えると…榊原は康太へ向き直った
「愛してる伊織!」
「愛してます康太!」
見つめ合い…榊原は笑った
清々しい笑いに…康太は…眩しそうに瞳を眇た
榊原は着替えを衣装ケースに入れ、部屋を後にする準備をする
忘れ物はないか確認してから…康太と共に部屋を後にした
部屋を後にして、階下へ降りるエレベーターに乗り込んだ
一階フロントの前に行くと…
飛鳥井の家族と…榊原の家族が…待っていた
康太は…何も言わず微笑むと…深々と頭を下げた
我等は…逝く
着いては来るな…と、線引きをする
胸を張り…家族を見る
瑛太は…康太に頭を下げた…背を向けた
自分の仕事をする…
それが…康太の為になるから…
清隆も玲香も…胸を張り…康太に一礼して会社へと向かった
清四郎と真矢、笙も…康太に頭を下げて、その場を後にした
康太は…瞬きもせず…
その姿を見送った…
見送った後に…一礼して
敬意を払って…頭を下げる
胸には…家族への思いを抱き…
康太は…何も言わず見送った
頭を上げると康太は…戸浪を見た
「若旦那、共に逝く気か?」
康太の唇の端が意地悪く吊り上がる
それを受けて戸浪も…嗤う
「ええ。君と共に逝きます!」
戸浪は言い切った
「なら…共に逝くか…!」
「ええ。」
戸浪が答えると同時に声がかかる
「飛鳥井康太様…お迎えに上がりました!」
闇に生きる男が気配を消してそこに立っていた…
康太は…驚く風もなく
「待ってたぜ!」と答えた
康太は…歩き出した!
その足取りに…迷いはなく
康太は、ゆったりとした足取りで…歩き出した
「秋月 」
秋月は…漆黒のスーツに身を包んでいた
榊原と酷似した姿なのに…闇に溶けてしまいそうに感じる
康太に呼ばれ秋月は返事する
「はい。」
「オレを連れて行け!
総てを終わらせる為に…終焉の地へ
オレを連れて行け…」
秋月は深々と頭を下げ
「はっ!お連れ致します!」と答えた
終わらせるのを望む人間が…此処にもいた
秋月は康太を案内するために…動き出した
周防の引導を…飛鳥井康太に引かせる為に…
秋月は部屋を用意した…
秋月は苦悩に瞳を閉じた
「秋月!目を逸らすな!」
前を歩く秋月の表情が見えているかのように…康太は…口にした
周防の終焉を目を逸らすことなく見届けろ…と康太の想いは告げていた
その言葉を受け…秋月は
「はい!何があろうとも…最後まで見届ける所存です!」と返した
駐車場へ案内すると……
そこにはバスが停まっていた
秋月がそのバスの前に停まると…ドアが開いた
「どうぞ!お願い致します!飛鳥井家真贋」と言い…
出迎えた
康太は何も言わずバスに乗り込んだ
康太は…通路の方に座ると
瞳を閉じた
榊原は康太の座席の後ろに座った
皆、一人ずつ座ると…
康太の反対側の席に慎一が座った
秋月は一番後ろの座席に座ると
「出してください!」と運転手に声をかけた
バスは走り出した
逝く先に何が待ち構えていようとも
その歩みを止めるつもりはなかった
終わらせる為に
康太は前を見つめた
果てを見つめていた
ともだちにシェアしよう!