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ⅩⅢ

――  大きな息を乱し肩で呼吸をするも、求める酸素の量が足りない。それでも探し回って行き着いた先は、学校の化学実験室。  立木先生の専門分野は化学。いつもスーツの上からは白衣を羽織っていた。きっと、此処に……。  ガラッと扉を開けて見た先には、幸せそうに寄り添い眠る二人がいた。朝日が差す室内は、温かくて近くに駆け寄り二人の手を片方ずつ握ってみれば、仄かに体温が伝わった。  息は…していない。 「……っ。あさ、と……、せんせ…ぃ」  手遅れだと、涙が伝う。  床に転がる錠剤が、夢じゃない事を訴える。 『真冬、俺達の関係は誰にも言ったらダメ。それと、俺があと僅かなのも……ね』  真冬は知っていた。  先生が朝冬と自分よりも長い期間、恋人関係を築いている事を知っていた。先生と関係を持つたびに相手を呼ぶ名前が朝冬だった。何度交わしても、何度指摘しても変わらず真冬(朝冬)を愛していた。  「愛してる」その言葉は確かに真冬を見ていても先生の瞳には朝冬が映っている。流した涙も透明で何の感情も動かす事無く消えていった。  いずれは別れる相手を予定よりも早く亡くし、まだ先も歩み続ける兄を早すぎるほど早くお別れした。  沈む手を救い出すのは、願い叶えるのは、自分自身だったんだ。 ――  今日も、後悔する。  シワシワになったルーズリーフを読んで、先生の言葉を繰り返し、また今日も二人を忘れる事なく後悔を背負い止まらない時間は朝を告げ、真冬は歩みだす。 fin.

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