1 / 12
1
部屋には甘い香りが広がる。
恋人同士のように、指を絡ませ、何度もキスをしてお互い、触れ合う。
「…………我慢できない。 兄さん。もう、挿れていい……?」
欲に濡れた瞳。つい、この前までただの義理の弟だったのに、今は俺を組み敷き、男の目をしてる。
「いいよ。奥まで犯して」
わざと甘える声を出して、お前を煽る。
α とΩ 。発情期以外では交わる時に一番フェロモンが強くなると言う。
きっと誰も知らない お互いの甘い香り。
「キツ…… 兄さん、痛くない?大丈夫?」
「は、はぁ……だい、じょ……ぶ」
頬を撫でられ、愛しそうな目で見られ、キスを受ける。まるで、壊れ物を扱うように、優しく揺さぶられた。そんなに優しくする必要ないのに……
…………俺達の間には何もないんだから。
「あ、アッ。んん……」
痛くても苦しくても、絶対に顔には出さない。お前を騙す為なら、この位の苦痛、耐えてやる。
「……………気持ちい、い」
「兄さん。可愛い……」
囁くように伊織 が繰り返す。
復讐の為に開いた体。結んだ歪な関係。
「伊織が好き……」
息を吐くように嘘をつく。
一緒に落ちてくれ。
━━━━俺の復讐のために。
ともだちにシェアしよう!