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突然現れたワンコ 3
とにかく、飯を食おう。落ち込んでいても、人は腹が減るんだ。
食わなきゃやってられない。
さっきまで2人で座っていたベンチは1人だと広くなった気がして、ため息をつきながらメロンパンを口に含み牛乳で流し込んだ。メロンパンはとても甘い。
でも、やっぱり寂しくて。メロンパンも牛乳もほんのり涙の味がする。
振られたてホヤホヤのときは特に、彼女との楽しかった思い出が不意に浮かんでは辛い。
なんかそういう時っていつも以上にネガティブな思考に陥ったりして、世界に1人ぼっちで取り残されたような妙な気分になって落ち込んでしまう。
そんなアンバランスなメンタル状態だったが、なんとかパンを押し込みながら食べていると、後ろから足音が聞こえてきた。
誰の足音なのか全く気にしていなかったが、その足音が俺のすぐ後ろで止まったかと思うと……結構大きな声で呼びかけられたのだった。
「桐生 先輩っ!!」
いきなり呼ばれてびくっとしながら振り向くと見上げるほどの大男が立っていた。
180センチくらいあるだろうか?
逆光だったから特にでかく見えたのかもしれないけど……。
つか、こいつ誰!?
するとその大男はトコトコと小走りでベンチをぐるりと回り俺の前に立つ。
やはり、デカイ!
そしてここに来て、さっきまで逆光で見えなかった顔がはっきりと見えたけどやっぱり知らない顔だった。
サラサラと風になびく短めの黒髪、はっきりした目鼻立ち、どこからどうみても品行方正っぽい明るそうなやつだ。
校章の色は赤だから、1年? 部活の後輩以外に1年の知り合いなんていないんだけど。
色々考えながら知り合いの顔を思い浮かべるも目の前にいる1年にやはり見覚えがない。
本当にコイツは誰なんだ?って思ってると目の前の1年がいきなり真っ赤になりながらふるふると震えだし、また大きな声で俺に向かって言ったんだ。
「先輩が好きです!! 付き合ってください!!」
………………はぁ?
スキデス、ツキアッテクダサイ?
はぁ??
ーーーーはぁ!?
な、何言ってんのこいつ!!
「な、なんだよ。いきなり! 罰ゲームかなんかか?」
「違います!! 俺、先輩のことが好きなんです」
いや、意味が全くわからない。
好きって何だよ。マジで!
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