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序章

ざわざわと五月蝿い海辺の上に、見事な昼の月が浮かんでいた。 夏の日差しに焼かれながら砂浜を進んでいくと、やがて身を寄せ合う彼らの姿があった。 私はどうする事も出来ず、ただ一筋の涙を流しながら見つめるだけだったが、しばらくしてからやっと彼らに触れた。 「…お前たちが徒花のように散っていくのは何とも哀しいよ。今世に生まれ落ちたのがいけなかったのかねぇ」 時代が悪かったのだと、そう言ってしまえば納得出来るだろうか。もしそうならばこんなに悔しい事はない。 「……またいつか会おう。次は間違えない」 願わくば、いつか二人が幸せになれますように…。

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